46)バイクに乗って旅に出た2005夏(その三)
「燃焼室」に戻る 表紙に戻る
その一/その二/その三/その四/その五

** かっぱのげんさんと「ちょんかけこま」 **

かっぱのげんさんは太鼓とこま回しが得意です。
げんさんが住むほたる村は四国徳島にあります。
「まんが日本昔話」に出てくるような自然豊かな山の中にあります。
げんさんは自然の中で子供達と遊ぶのが仕事です。 
ほたるむらのいりぐち看板の写真  ほたる村でげんさんにこま回しを教えてもらいました。

 げんさんにかかるとおおきなこまも空中を飛びます。
おおきなコマに紐をまいているげんさんの写真
中心軸を一回りして 表をとおして 回転軸にさらに巻いて
片手で持って完成 一気にふり落として 落ちないように紐の上で両手で回します
回転が乗ったところでコマを空中に放り上げます  ふつうのこまは床やテーブルの上で軸を中心に立って横に回ります。回転が弱くなると、パタリと倒れてしまいます。

 げんさんのこまは、床にも地面にも触れずにタコ糸の上だけで空中で回ります。地面の上で縦に回るのが特徴です。回転が弱くなると、タコ糸の上から地面に落ちてしまいます。

 このようなこまを「ちょんかけこま」というそうです。
とても難しい回し方です。
 とくべつなこまじゃなくても、ふつうに駄菓子屋さんで売っている小さなこまも、タコ糸の上で縦に回すことができるそうです。げんさんが子供の頃はみんなできたそうです。げんさんは同窓会の時にこまをもっていってみると、おじさんたちは昔の事をすぐ思い出して皆その場で回せたそうです。子供の頃に覚えた遊びは難しい事でも忘れないようです。
鉄コマに紐を巻いている写真 小さな鉄コマを立てに回しているげんさんの写真 一回ごとに空中に放り上げて回していげんさんの写真
片方の手は常に固定しています どんどん回転を上げていきます 十分に回転が乗ったら放り上げて手に乗せます
 げんさんの回している鉄心コマは町に普通に売っているものなので、早速買いにいきました。 
日和佐町のお土産物屋さんの写真

 鉄心コマは日和佐町内の土産物屋さんに売っています。

 ここの店主もげんさんに習ってチョン掛けコマを練習したそうです。でも一生懸命練習しても回せるようにならなかったそうです。何回も何回もコマを床に落としてしまって床に大きな穴があいてしまいました。

 床に転がってるのは猫のピンクです、名前を呼ぶと返事をします。
 おやじさんがしゃがれ声で「ビング〜」と呼ぶと・・・澄んだ声で「ニャ〜」と返事します。
お土産物屋さんn店主とねこのピンクの写真
さてと、本題です

 げんさんのこまは地球の重力に対して縦に回ります。
本来地面の上で横に回すように作られた鉄心コマを、紐の上で縦に回す事はとても難しいのです。

 ある質量をもつ回転する物体の軸は一定の方向を保持する性質を持つというジャイロスコープの原理、その回転軸に力を加えると回転軸に直角に旋回運動が起るプレセッションの性質、その両方を同時に空中でコントロール出来なければいけないのです。

 そこで根本的な疑問として、なぜ縦に回すようになったのか?

 コマの起源は、紀元前のエジプトまで遡るといいますが、
例えば丸っこい木の実などを回して遊んだとか、形の綺麗な巻貝などに紐を掛けて回したとか、想像出来ますが、縦に回せる自然物は思いつきません。

 げんさんのコマは「肥後ちょんかけコマ」(肥後=現在の熊本)の変化形らしいとの事です。
その「肥後ちょんかけコマ」は中国コマの「輪鼓(りゅうご)」というミシンの糸巻きのような形をしたコマを両端に棒の付いた紐に絡めるようにして縦に回すコマの変化形だとの事です。

 「輪鼓(りゅうご)」は回転軸の重心上の部分に紐を掛けて回しているので、回転軸には回転に対する順方向の力しか働かず、コマはジャイロスコープの原理によって常に一定方向を向いたまま紐の上で回転力を与える為の上下運動と共に回り続けます。

 その、「輪鼓(りゅうご)」を地面に落として割れてしまった片割れを機用に回した事が「肥後ちょんかけコマ」のはじまりではないかといわれています。

 コマ回しが一般庶民の遊びとして行われるようになったのは江戸時代以降の事だったらしく、げんさんが子供の頃は関西でも子供達の普通の遊びとして縦に回すちょんかけコマがあったそうです。

 しかし、北海道では全く見た事がありませんでした。北海道は開拓時代の一時期「熊本藩」の管轄だった経緯も有るのでなんらかの形で残っていても良さそうなものですが、自分が知らないだけなのかもしれませんが、鉄心コマはありましたが、縦に回すやりかたは子供の遊びの中に自然に伝わっていている状況はありませんでした。

 思い立ったら即行動!ちょんかけコマは熊本が発祥であるとの情報を得て、げんさんの回している鉄心コマを手掛かりにそのルーツを探す旅に出る事にしました。さっそく四国を縦断し九州は熊本を目指します。
熊本城の写真
おもちゃ問屋さんの写真 郷土資料館の写真 展示されているちょんがけこまの写真
 まずは熊本城に向かいます、城下に「熊本伝統工芸館」なる建物を発見し中を覗いてみると、、、あっけなく「肥後ちょんかけこま」を発見する。早速職員の方にいろいろ聞いてみるも欲しい情報が得られない。そこで適当な大きさのコマを一つ買って現状調査に出る事にする。

 城下町で子供らの遊んでいる公園をいくつか探索し、コマ回しをしている子供の姿を探してみるもまるで気配すら無し、子供らにコマを見せてチョンかけコマについて聞いてみると、存在は知っていたものの「学校の体育館でおじいさんがまわしているのを見た事がある」というものだった。

 小さい子連れの若い母親に聞いてみると見たことも聞いた事も無いというが、年配の御婦人の話では「ちょんかけこま保存会」というものがあるらしい、それは正月などにイベント的に行われているもののようで、日常的に子供の遊びとして存在するものではないらしい
熊本市内を探索中に・・・
 商店街の中で渋滞する車の流れに任せて辺りをキョロキョロしていると、一台のスクーターが横に並び「札幌から来たの?」と、ご婦人が話し掛けてきました。・・・とここまではバイク旅をしていると日に何度もある普通の出来事なのですが、このケースはちょっと珍しい展開になりました。次の質問は「泊まる所はどうしてるの?」と聞いてきました。

 さすがに「いつも適当に野宿してます」とは言えないので、「まだ決めてません」などの当り障りのない返事をすると、この近くにある健康ランド的な温泉施設に行くといいよと、そこは安く泊まる事も出来る事を教えてくれました。行く道順を身振り手振りで伝えてくれて、スクーターは車列から離れ路肩に止まりました。ここでおわかれかな?と思いあいさつしようと目線を送るもご婦人はウエストバッグをごそごそしています。

 商店街の端の大きな変形交差点の信号が青になり、車列が動き出す直前に、スクーターはバイクの横に滑り込み、その健康ランドの割引券を手渡してくれました。「ありがとう!」「気をつけて!」小さく手を振って違う方向に走り去るスクーター、僅か信号2つ3つ通る間の出来事でした。

 そして割引券と思って何気に受け取ったそれは、実は入館本券だったのです。お金を出して購入した入館回数券の一枚だったのです。見ず知らずの旅人の今晩の寝床を心配して入館券をくれたものでした。なんというやさしさか、もともと熊本は好きな町でしたが、この一件でますます好きになりました。小さく手を振り走り去る竹下恵子似の横顔は脳裏に焼き付いています。誰が何と言おうとも熊本は日本一美人が多い町と確定しました。
鑑賞用と協議用の二種類ある
 次は駄菓子屋を探してみる。熊本には城下町の一角におもちゃの問屋街があるという、小売りもしているという大きな問屋にたどりつく、装飾品のこまはあっても、実際にまわして遊ぶコマは紐を掛けてまわすものは無く、指で直接軸をまわして遊ぶ一般的な小さなコマばかりだった、

 店主に持参の鉄心コマを見せてみると、店の倉庫に通されて古い在庫まで探してくれたものの、はるか昔に同じような品物を扱った事があるが、現在では扱っていないという事だった。問屋で扱いが無いという事は巷(ちまた)に出回っていないという事で、近隣の子供の手に渡っている可能性が無いという結論に達する。
ちょんがけコマの工房の看板写真 古いちょんがけコマの写真 こまを作る旋盤の写真
 次は実際に売っている「肥後ちょんかけこま」の製造元に行ってみる事にします。コマを一つ買ってユーザーとして使い方を教えてもらいに行くという形、説明書の住所をたどって住宅街の中にひっそりとたたずむ自宅兼工房を訪ねると製作者の工房主は丁度外出中で奥さんが応対してくださいました

 工房の中で肥後チョンがけコマについての話を伺い、こまが作られている行程を見学させてもらう、「肥後ちょんかけコマ」は大きく二種類に分類される、一つは伝統を忠実に受け継いだ鑑賞用のこま、特徴としては鍛造された鉄製の軸を採用し特徴的模様装飾されている事、

 もう一つは実際に回す為のこま、特徴はステンレス製、もしくはメッキされたなめらかな中心軸を採用し、回転バランスをとった本体に強力に接合されている、土産物屋で売っている「ちょんかけこま」は全て鑑賞用のこまで、実際には回す事は出来ないものである事を説明される。
子供の小使いで買えないコマ
 また実技用こまは作りが精巧で、子供が買える値段ではなく(一個1万円程度する)、重量も500グラム前後あり子供の力で扱うのが難しく、回す技術共々難しいものである事がわかる。中心軸の作成やコマの回転バランス取りの行程が手間がかかり一個作るのに時間がかかり、殆どオーダーメイドの受注生産状態であるという

 いろいろと「ちょんかけこま」についてお話を伺い、話の流れ的に実技用のこまが欲しくなるものの工房の売店ですら在庫が無いという残念な結末!

 急ぐ旅でもないので、工房でこま作りを手伝ってコマをゲットしたいと思ったりしたものの、旋盤で削った中心軸にメッキ処理をして、本体に取り付けバランス取りをすると完成するという行程は、数日で完成するようなレベルではないので諦めるしかないのがとても残念、

 ところが嬉しい事に隣町に住んでいる熊本市指定無形文化財「肥後ちょんかけこま保存会」の方に連絡をとってくださり、回し方を教えてもらえる事になりました。お家を訪ねると「ちょんかけこま」について貴重なお話を伺って近所の公園で回し方を教えて下さるという事で公園へ・・・

 熊本市指定無形文化財「肥後ちょんかけこま保存会」の堀さんの演技です。
ちょんかけこま保存会の堀さんがコマを回している写真 立てに回転をつけています 回転が乗ったら横に振り出します
斜め横方向に振り出しながら回転を上げています 一回一回空中に放り上げています 放り上げたコマを両手で張った紐で受け止めます
回転をのせた状態で横方向に振り回します 片手でもって身体の回りを全周させます  実際の肥後ちょんかけコマを目の当たりにして初めて、観賞用のコマは回す事は出来ないという言葉の意味がようやく理解出来ました。
立てに回転を上げていきます 十分に回転を上げます 回転が上がったところで紐の下のほうで受け止めて回転力を使ってコマの登らせて鯉の滝登りです
立てに回転を上げていきます ちょんがけこまは重いので回転を上げるのに時間がかかります 十分回転があがったらこんどは横に走らせてコマの綱渡り
紐からこまが外れた瞬間です ここから落下するコマを紐で受け止めます 身体から離れたところでまわされています
最後は手で受け止めます  堀さんは、肥後ちょんかけこま保存会の活動として毎週末に熊本城二の丸公園にて実技指導をしておられる方です、付近では有名な方で、公園に居合わせた近所の方々もしきりに拍手して盛り上がっていました。

 大きな技を次々繰り出すこま回しも、細かくカスタマイズされたこまを使っています。動きの大きな技がたくさんあり、順を追って説明つきで披露してくださいました。
 公園で子供達がちょんかけコマで遊んでいない訳が一瞬にして理解出来ました。これは小学生の子供が簡単に出来るようなコマ回しではありません。

 実技用の「肥後ちょんかけコマ」一個分けていただき、実際に指導していただきました。いつかしっかり回せるようになって週末の二の丸公園に現れたいと思います。
城下町の公園でこまを回す子供達を見つけるつもりで探しましたが、コマを回している以前に、公園で遊ぶ子供の数そのものが少なくなっているような印象をうけました。
現在地点===「燃焼室」趣味の部屋
46)バイクに乗って旅に出た2005夏(その三)
44)バイクに乗って旅に出た2005夏(その一)

45)バイクに乗って旅に出た2005夏(その二)

>46)バイクに乗って旅に出た2005夏(その三)

47)バイクに乗って旅に出た2005夏(その四)

48)バイクに乗って旅に出た2005夏(その五)
「燃焼室」に戻る
下の写真をクリックしても戻ります