1234567890 その弐
劣化する部品

バイクはおおまかに金属とプラスチックで出来ています。
 金属部品も劣化したり疲労したりしますが比較的耐久性があります。しかしプラスチック(可塑性物質)部品は経年劣化が起こりやすい傾向があります。特にゴム系の柔らかい素材の部品はその柔軟性を長年に渡って維持するのは技術的に難しい事です。いずれにせよ使用される条件によって部品の寿命は大きく変わります。
コネクターから外されたメインキーハーネスの写真
1)
 たまたまタイヤ交換に訪れたバイク屋さんの駐車場から出ようとした時にトラブルが確定的になりました。整備工場の一角をお借りして作業を開始します。これはハンドル周りの配線が原因だろうという事でハンドルのメインキーに繋がっている配線を元から取り外します。
被服をはがされつつあるメインキーハーネスの写真
2)
ニッパーで被服を切り開いていきます。 
配線の断線箇所の写真
3)
 程なく配線の切断箇所を発見しました。被服が硬化して切れてしまっています。本来配線の被服が持つ柔軟性は全く残っていません。この場所はハンドルを切る度に屈曲されるところです。

 約6年の使用で切れてしまいました。林道等の悪路走行が屈曲回数を増やし劣化を進めたものと思います、特に厳冬期の使用が低温で硬化した配線を無理やり屈曲させる結果となり、極端に劣化を進めたものと推測します。
断線箇所を圧着スリーブで繋いでいる写真
4)
切れた配線と切れかけの配線を切って圧着スリーブで真っ直ぐに繋ぎなおします。
圧着スリーブを絶縁熱収縮チューブで処理している写真
5)
 熱収縮チューブで絶縁して他の配線と共に束ねて弱い箇所を補強します。全体を電工用絶縁テープで巻き直してハーネスを再生します。取り付けの際に、修理した部分に屈曲が加わらないように配線を取り回して取り付けます。
メインスイッチの分解写真
6)
メインスイッチの内部も分解して点検してみましたが、異常はありませんでした。
インフォメーションパネルハーネスコネクターを外している写真
7)
開いたついでに他にも接触不良の点検をします。 
開放型コネクターを分解している写真
8)
コネクター部に接触不良がありそうです。コネクターを分解して調べます。
12極コネクター雄側の正面写真
9)
 右の上下2本の電極が極端に腐食しています。それは融雪剤にやられた可能性が高いと考えています。このタイプのコネクターは防水ではありません。それは逆の発想で水に濡れても進入した水が抜けやすく電極も乾燥しやすい作りになっています。
12極コネクター雌側の正面写真
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 しかし融雪剤を含む水分が入ってしまうと、乾燥する前に急速に腐食が進んでしまいます。それは融雪剤を含んだ水が電気を通し易い性質を持つ事に起因します。電圧の加わった端子間に融雪剤交じりの水分が付着すると、微弱な通電が起こりある種の電気分解のような状態になり急速に電極が溶けるように腐食してしまいます。

 このコネクターの設置場所はエンジンの真上にあたる場所なので、走り終えてエンジン停止後にはエンジンの余熱に暖められて水分は蒸発してしまいます。それを見越して開放型のコネクターを採用しているものと思われます。しかし融雪剤を浴びるとひとたまりもありません。今後このような開放型コネクターを採用している車両はこの手のトラブルに見舞われる可能性が増えるものと思います。
エンジンコントロールコンピューターユニットメインハーネス被服がひび割れを起している写真
11)
 メインコンピューターの配線束の被服がひび割れています。ここは普段屈曲を繰り返す部分では無いのですが、明らかに素材の劣化によるひび割れがおきています。今後大きなトラブルを招く可能性ががあり、とても頭のいたい部分です。
鋭角に曲げられた配線被服が割れてきている写真
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ここは内部の配線が見えています。
明らかな劣化が見られるボロボロになった配線被服の写真
13)
 ばらばらになりそうな勢いで劣化が進んでいました。これも近々根本的な修復をしなければいけない部分です。とりあえず螺旋状の配線保護部材で巻いておく事にします。
プラスチック部品の劣化は避けて通れない部分ですが、急速に崩壊するような劣化はかんべんしてもらいたいです(笑)
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