1234567890 その六 
小さな傷でも大きなダメージ 
 ハンドルの手で掴む場所、グリップの中に組み込まれて、寒い時に電熱によりグリップを暖める仕組み「グリップヒーター」が片方だけ使えなくなりました、
グリップラバーを外したアクセルグリップの電熱ヒーターの写真
1)
 外から確認出来るところは全て確認しても異常がありません。しかしテスターを使ってグリップヒーター本体の導通を計ると・・・導通がありません。それは中で線が切れているという事です。グリップラバーを細かく観察する、表面にごく小さな傷がありました。グリップラバーを全部壊して取り去ってしまうと、中から明らかに断線している部分が現れました。

 本来グリップラバーに守られているはずの内部ヒーター部分ですが、何かの加減で小さなダメージを受けていたようです。
熱で溶断したグリップヒーターの電熱線の写真
2)
 良く見ると電熱線が溶断しています。その時に回りも広範囲に溶かしてしまっています。原因は砂利道での転倒の時に運悪くグリップ部分が接地してしまい、その時に地面の鋭い砂利の角にでもぶつかってダメージを受けてしまったものと考えられます。

 ダメージを受けて傷の付いてしまった電熱線は傷の部分だけが細くなる事で電気的抵抗が増え、発熱量が増大したものと考えられます。そうして周りの樹脂を溶かしてしまう事で発熱した熱が周りに伝わらなくなり、ますます電熱線は加熱し、最後には自らの熱で溶断してしまったものと推測します。
溶断した場所に棒状圧着端子を近づけて大きさを比較している写真
3)
 切れた線は電熱線です。半田付けなどは利きません。圧着スリーブで繋ぐ作戦で行きます。しかしシャープペンシルの芯より細いこんな細い線を繋ぐ圧着スリーブは見たことがありません。市販のスリーブを探してもサイズ的に全く話の外でした。

 そんな時、「棒状形圧着端子」が目に留まりました。端子先端を加工して超細い圧着スリーブを作る事を思いつきました。
棒状圧着端子を極小圧着スリーブに加工している写真
4)
 棒状形圧着端子の棒状部分の先端部をカッターで開いて電熱線を挟み込む隙間を作り、溶断している傷口一杯の長さの圧着スリーブを切り取って作り出し、その部品を使って溶断線を繋ぎ合わせるという方法です。
出来上がった極小圧着スリーブで切れた電熱線を繋いでいる写真
5)
 時間を掛けてじっくり部品を作り出し、溶断している傷口をカッターで修正して整えて、きっちりの長さの自作圧着スリーブを使って挟み込んで溶断線を繋ぎました。
電熱線の修理箇所を耐熱樹脂で固めている写真
6)
 しっかり圧着が成功した後に、耐熱樹脂の接着剤で固めて完成です。これで圧力や衝撃を加えても溶断修理部分には直接力が掛かりません。このうえから新しいグリップラバーを取り付けて完成です。この方法はいろいろ応用が利きそうです。 
 グリップヒーターはちょっと寒い時からとんでもなく寒い時まで広く活躍してくれる重要装備です。
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