十二日目 / 十五

指宿 バイク前輪破裂 出水市特攻碑公園 熊本城下
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8月21日
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商店街のベンチに朝日がまぶしい
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2)
指宿駅は北海道の稚内駅と姉妹駅になっている ・・・
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爆安っていくらだろう?
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鹿児島湾海岸線を走る
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 噴煙を上げる桜島
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6)
鹿児島市内の路面電車の軌道敷には芝が植えられている
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 昨夜呑んだ焼酎を求めて地元の酒屋に入ります
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8)
 さすが本場の品揃えです。それでもこの店では扱いがありませんでした。店主は目的の酒の扱いのある酒屋を地図を書いて教えてくれました。 早速探して行ってみると・・・通りに面した大きい酒屋です。店番のおばちゃんに○○○はありますか?と聞いてみたことろ、どこかに内線電話をかけながら「紹介のおきゃくさんかい?」と聞いてきました。ん?2〜3会話をして、通りすがりの観光客であることが判ると、「今は在庫ないけど他にもいいのがあるよ」と、話の方向が変わってきました。 話半分で切り上げて最初の店に戻りました。

 真夏の鹿児島で出会った焼酎のお湯割りに感化されて以来、普段から芋焼酎のお湯割りが好きで旅に出る時も連れて歩いている事を店主に話して、札幌に連れて帰る酒を一本選んでもらいました。

 良い材料を使って丁寧に醸せば旨い酒が出来る。小さな酒蔵でそれをやるからどうしても生産コストが高くなる。実はメジャーブランドが規模を生かして同じことをすると旨い酒が安く出来るのです。と、地域限定の酒を選んでくれました。 それはスーパーで安売りしている酒と同程度の値段でした。

 良い店主にめぐり合いました。こういう店に通う事が出来れば、味覚を育てて貰えそうです。その土地の酒はその土地の料理や水と連動していると思う。旨い酒を味わうために旨い料理があるのか?旨い料理を味わうために旨い酒があるのか?その両方だと思う。

 店先で荷物を解いて、パッキングしなおします。既に四国で買った栗焼酎とあわせて一升瓶二本と一升紙パックの合計約5リットルの焼酎を積んでいる走る事に、、、(笑)
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9)
 旨そうな酒が手に入り気を良くして国道の峠道を快走していました。

 突然対向車がセンターラインを割って向かってきました。「あ゛〜」何も考える間もなく咄嗟に左にかわしたものの、そのまま路側の緑地帯へ突入、植え込みを突破して反対側に飛び出た所でかろうじて立て直して本線に戻りました。まともに縁石にヒットした衝撃でタイヤがバースト(破裂)してしまう

 対向車はそのまま走り去っていた。なぜセンターラインを割ってきたのか?理由も原因も判らない。怒りに任せて追いかけ止めて問い正した所で何の証拠も無い、口論になれば逆にこちらの立場が悪くなる。 それ以前にタイヤが破裂状態ではまともな走行もままならない

 危ない所だった、心臓のバクバクがなかなか収まらない。それでも前輪の空気が抜けきる前にコンプレッサーのある所まで辿り着かなければ、後処理がさらに面倒な事になる。ここは腹立たしい気持ちを抑えて、早く忘れる方向に気持ちを切り替えるしかない。

 正面衝突になる所を見えない力に助けてもらったということだ。
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10)
 峠を下って最寄のガソリンスタンドまで辿り着き、「修理完了したらハイオク満タンにしますんで場所とコンプレッサー使わせてください」と、修理開始。観察すると当たった部分のタイヤコードがバッツリ切れてリムが変形していました。
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11)
縁石を使ってブレーキディスクを浮かせてタイヤを外す。
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12)
タイヤチューブはおもいっきり裂けていました。
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13)
 口金部分も裂けています。こうなるとチューブを取り替えるしかありません。しかし手持ちの予備チューブは非常用に携行しているもので、前タイヤ(19インチ)後タイヤ(17インチ)どちらにでも使えるように中間サイズ(18インチ)です。 

 それでも交換すればとりあえず走る事は出来ますが、後に正しい適合サイズのチューブへの交換が必要になります。

 ここは山中ではないので修理が一回で決まるように丁度サイズ(19インチ)のチューブを町に買いに行く事にします。
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14)
 破れたチューブを手にバイク屋を探していると、夏休み中の女子高校生三人組に出会いました。彼女らはお菓子を抱えて街中のカラオケ店に繰り出す所です。事情を話してこの町にバイク屋さんは無いだろか?と聞いてみた所、なんとなく判らない感じながら、それでも記憶を手繰る会話をしている二人・・・、その後ろで電話をかけている子がいる。ん?近所の車のディーラーに勤めている父さんに電話をしていた。・・・話が大きくなる方向に動いている(笑)

 とりあえず彼女のお父さんに会うために、破れたチューブをぶら下げて付いていく。ディーラーの裏口からお父さんが出てきた。表情が暗い、案の定バイクの修理は引き受けられない旨の話を始めたので、遮るように明るく、「お願いしたいのは替えのチューブを売っているバイク屋さんを教えてほしいのです。」と、裂けたチューブを差し出した。

 すると表情が緩み、方言丸出しで「役場の場所はわかりますか?」と聞いてきた。ん〜役場はわかりませんが、・・・と困った所に娘が助け舟を出してきた。早いテンポの親子の会話で、あ〜あそこね、とわかったようで、方向が一緒だから案内してくれることに、娘に頼られた父の面目をつぶさずによかった。・・・破れチューブの旅が続く事に、

 焼け付くような鹿児島の太陽、うだるような暑さの中、彼女らの方から流れてくる爽やかな風に引かれるように付いて行く。歩きながら話をした。九州の話、北海道の話、気に入りのお菓子の話、学校の話、修学旅行の話、卒業しても地元に残る話、・・・ここの風土は素直な心を育むらしい。

 キョロキョロしながら町を歩いていると「特攻碑公園」という看板が目に留まった。聞いてみると、子どもの頃から遊んでいる公園で春に桜がすばらしいらしという。修理が終わったら行ってみよう。
 
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 炎天下を2キロ程歩いて目指すバイク屋に到着です。ノリで一緒に写真に納まってもらいました(笑) カラオケ代を出してあげたい気持ちをぐっと堪えて言葉だけのお礼をしてお別れをすると、彼女らは来た道を真っ直ぐに引き返して行きました。明らかに遠回りしてくれていました。

 困っている人に親身に接する。そんな心はどうやって育つのか?それは教えられることではなく、周囲の空気を伝って自然と染み込むものだろう、この土地の風土そのものが育む心なのだろう。それは受ける側の心にも染み伝わっていく。

 そんな事を考えながら、楽しそうに並んで歩く後ろ姿を見送った。
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16)
 ここは職人気質の親父さんと息子さんが営む昔ながらの町のバイク屋さん。古い在庫の中から適合サイズのチューブをみつけてくれた。 渡す際コンプレッサーで空気を充填して品物をしっかり確かめる所が職人気質だ、

 ありがたい事にバイクの所まで車で送ってくれることに、 道端の特攻碑公園の看板の前を通った時にそれについて聞いてみた。 この町にあるのは海軍の特攻基地跡で滑走路はゴルフ場になっているらしい、当事沖縄がやられた次は自分達の所がやられると覚悟を決める空気があったという。おだやかな口調で話す薩摩男の目は鋭かった。
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 出水(いずみ)特攻碑公園、(旧日本海軍航空隊出水基地跡)

 特攻といえば反射的に知覧基地を想像してしまう頭になっていましたが、戦争当事日本軍には陸軍と海軍が有り、知覧基地は陸軍の基地、ここ出水基地は海軍の基地でした。今更ながらそんな事に気付かされ、地下壕の階段を降りていきました。・・・
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 熊本に向かう途中しばし汽車と並走して遊ぶ。 バイクに乗って自由に走り回れる事がどれほど恵まれている事なのか、それは危険と表裏一体で、自分の力の及ばない所で生かされている自由なのかもしれない。そんなことを考えさせられる一日だった。
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19)
 以前訪れた半屋台のトンソクの店を探して熊本城の周囲を探索するもなかなか発見出来ない。うろうろしているうちに空腹に堪える旨そうなカレーの匂いに呼び止められる。トンソクを諦めて今夜はカレーに、普段たまに食べたくなるカレーの店が札幌に三軒、美瑛に一軒、富良野に一軒ありますが、そのカレーローテーションに今回熊本に一軒加わりました。・・・でも次に食べられるのは何年後だろう?

 店の常連さんと話が盛り上がり、知り合いが店主をしているという、いい居酒屋が近くにあるとの情報をいただいて行ってみる事にする。 ところが先に店を出た常連さんが戻ってきた。「今日は休みだったよ」とすまなそうに教えにきてくれました。なんと律儀な方、「まあ風呂でも浴びてから先は考えます」と、すぐ近くの銭湯に向かいました。
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20)
 ところが・・・すぐ近くの銭湯が見つからない、見つからない、煙突も湯の香りも見つからない。30分は探索してようやく発見した銭湯は空襲にも焼け残ったいにしえの湯でした。・・・
バイクに乗って旅に出た2009 十三日目に進む
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