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交通障害が起こる程の吹雪になった 
 7)吹雪を突破し

12月30日 宗谷岬に向けて出発した

悪天の予報が出ているものの札幌は落ち着いている。状態を見て途中で引き返して車で行く事も考えて出発する。宗谷まで往復可能かどうかを判断するテスト走行開始。裏道を駆使して様々な路面状況を走ってみる。

予測通り走れてしまう。自分を断念させる為の事由が見つからないまま高速の乗り口まできてしまう。道央自動車道は路面凍結の恐れで速度規制が敷かれていた。非力なこのバイクにとっては好都合だった。

バイクの状態を点検して高速に乗った。時速100kmまで加速して巡航出来るもエンジン振動が激しく壊れてしまいそうだ。車の流れを読みつつ80kmまでに抑える走りをする。実際に壊れる事は無いにしろなんとなく古いバイクがかわいそうだ。
 
 高速に乗る前の最終チェックを終えた状態の写真 バイクの速度計の写真
小さいながら強いエンジンを積んでいる。速度計は120kmまである
制限速度をきっちり守って走っている車に付いて我慢の走りで距離を稼ぐ。

砂川ハイウェーオアシスで給油すると1リットル当たり25km以上走っている事が判る。燃料タンク容量は6リットルなので、単純計算で一回の給油で約150km走れる事になる。それと別に予備の燃料ボトルに1リットル積んでいる。
 高速のサービスエリアの給油所で燃料補給している写真
路面状況は深川まではドライ、ウエット、旭川までがウエット、旭川から降雪、ウエット、シャーベット、比布で降雪、積雪、和寒で吹雪、視界不良、積雪、剣淵で激しい降雪、吹雪、積雪、速度標識が視認出来ない程の激しい降雪、車両の低速走行による轍発生、終点士別剣淵で高速を降りる。

国道40号も激しい降雪によりアイスバーンをベースにした不安定な轍路面、通過車両も低速走行をしている。士別市街の通過では赤信号のタイミングを見て路肩に大きく外れて止まり、バイクの後ろに車が付かないように全てかわして進む、大きくタイムロスになるも安全第一

国道の路面状態が酷い。数日前まで続いていた降雪が圧雪路面になり、前々日の暖気で緩んで融けて直ぐまた寒気が入り凍り付いた強固なアイスバーンを形成している。その上に激しい降雪が続き除雪が間に合わず深く積もっている。酷い砂利道を氷と雪で再現したような極悪な道だ。

ましな路面状態を期待して士別バイパスに乗ると路面はぶ厚いアイスバーン圧雪で国道とさほど変わりない。しかし交通量が少なく交差点が無い分路面の荒れ方が均一な事が良い。轍は深いもののアクセル開けて距離を稼ぐ。

士別を出て北に行く程悪天激化、路面悪化、吹き溜まり多発、状況は厳しさを増してくる。名寄バイパスに乗る。除雪状態は下道と変わりなく一日中除雪が入らなかった田舎道状態。凸凹アイスバーンベースの深雪轍道、通常想定される最も厳しい悪雪路。車高の低いFR車やFFの軽自動車等はスタックの恐れあり

名寄バイパス路面劣悪、風雪強く、交通量少ない。厚いアイスバーンベースの踏面の荒れた深い轍路面は極めて走りにくい。試しに加速して路肩の未踏の新雪30cmに入ってみると、パワー全開で走り続けられる。低速重視のエンジン特性がトラクションを持続し速度を維持している。小さいながら悪路を走破する専用設計が効いている。しかも面白い。

たまに来る後続車は見つけ次第路肩に止まって通過するまでウインカーを点けて待ってやり過ごし、通過後ただちに後を追う事の繰り返し。吹雪が酷く先行車の巻き上げる雪煙もさらに酷く追従もままならない。
 酷い吹雪にやられている写真
名寄バイパスを降りて国道40号に出ると路面の荒れ方が一味違う。バイクを止めて確認している所にミニパトが通りかかり後ろに止まった。なんだろう?心配して見に来たか?なんと、原付が高速道路を走っていると通報があったという。俺の事か?(笑)それで確認させてくれという。しかしこの吹きさらしでエンジンを止めると再始動不能になる危険があるので、この先の美深町の入り口のセイコーマートで止めるからそこで確認してもらう事にして、ミニパトを後走に出発。これにはとても助かった。制限速度で走っているので他の後続車が追い越し出来ずミニパトの後ろに行列になっている。

セイコーマートに着くと程なく確認。まあ車体は小さいけどナンバー見れば判りそうなものだけど(笑)そうして警官と話をしている所に必死の形相で話しかけてくる者有り。乗っている原付バイクがガス欠になり往生しているという。近くのガソリンスタンドの場所を警官に聞いている。・・・「年末のしかもこの時間じゃね〜」 歯切れの悪い答えを残してミニパトは去っていった。
 走り去るミニパトの写真
話を聞くと原付バイクで宗谷岬を目指しているライダーだった。悪天に往生しているうちに燃料も尽きてコンビニで途方に暮れている所にミニパトが来たので駆け寄ってきたという。もう時刻は6時過ぎ周囲は真っ暗だ。今日は何処まで行くつもりなの?と聞くと、今夜はキャンプは諦めて美深温泉に知り合いが泊まっているのでそこに行くと言います。

ならばと、「あんたラッキーだよ」と、背中のザックから燃料ボトルを出して、この場所から美深温泉までは10km程度、とりあえず今日はこのガソリンで温泉にたどり着いて明日スタンドで燃料入れたらいい。真紅の燃料ボトルを手渡した。

降りしきる雪の中、止めているバイクに見る見る雪が積もっていく。急いで書類をしまって出発準備をしていると、さっきのライダーが燃料ボトルを持ってきた。蓋が開けられないという。これは正しい判断だ、今回背中のザックに突っ込んで運ぶ事になるので、新品のパッキンに交換して漏れないように硬く蓋を閉めていた。緩む方向に強く回せば開くのだが、プラスティックの蓋は力任せに回すとねじ山が壊れる危険もあり、それを感じて持ち主に確認したものだ。

悪天の中、急いでいる事もあり、力任せにしてしまいそうな所、開けられませんと謙虚に確認する姿勢は見習うべき行動だった。一度蓋を緩めてから戻し、このボトルは尻たれするから、蓋を取って給油口同士を合わせるように一気に入れるといいよと手渡した。無事給油が終わって空のボトルを返しにきた時、ポケットの辺りをもぞもぞしはじめた。

すかさず用意していた台詞を吐いた。お金は受け取らないよ。そのかわり誰か困っている人を助けてあげて。

歯の浮く台詞が決まった所で出発。原付ライダーのエンジンがかかり無事に出発した事を見届けて出発した。・・・実は自分のバイクの燃料消費の把握が出来ていない。悪路でもがいてどれだけ余計に燃料を消耗しているか判らなかった。それでも予備の燃料があればどうとでもなる。と、アクセルを開け続けていた。

しかしその虎の子をあげてしまった(笑)宿を目前にガス欠したりして(泣)・・・たった今かっこつけた相手にそんなかっこわるい姿を見られるわけにはいかない。そういう心理が働いて先に行かせていた。「かっこつけるのもゆるくないべさ」北海道弁(笑)

走りだして間も無く美深の街中のガソリンスタンドの電気がついていた!店じまい寸前に滑り込みセーフ。原付ライダーと並んで給油する。お互い安堵の表情を見合わせる。でもこちらはポーカーフェースというやつだ。(笑)
 ガソリンスタンドで給油している写真
美深温泉に到着する。コテージには何回も泊まった事があるけど本館には初めて泊まる。季節限定でチョウザメ料理も賞味できるという。今回は直前予約なので標準の食事だけど十分美味い御飯だった。ジンギスカン風味の一人鍋が付く。宿にはそこそこ泊まり客がいて装備を解除したライダーの見分けが付かなくなってしまった。
 美深温泉に到着した写真 拡大
ロビーに水槽が置かれチョウザメが展示してある。
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 鹿がかわいそうなのでのらなでくださいと書かれたプラカードの写真 
鹿がかわいそうなのでのらないでください。と、子供にわかりやすい言葉で書かれている。角をハンドル代わりに跨ってみたくなるか(笑)

「かわいそうだから」とは良い言葉だ。子供の頃池で遊んでいて夕方になり帰る時、捕まえたカエルを拾ったビニール袋に入れて持ち帰ろうとする子供がいた。「かわいそうだから逃がしてやれ」と、皆が見守る中、渋々ながら袋から取り出して池の辺で小さな手を開くと、カエルがピョんと跳ねてスイスイ泳ぎだす。「元気でな〜」、逃がした子供は残念そうな顔をするも周りで「良かったな〜」

それは持ち帰った所で結局は死なせてしまう事になるのが判っているからだ。「カエル死んだらかわいそうだべ」「逃がしてよかったな〜」皆でその子をフォローする。いつしかその子は何か良い事をしたような表情に変わっていく。「かわいそうだから」それは物言えぬ小さな命への思いやりの言葉だった。
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