裏話あれこれ 
 
 
a)某宗教団体関連の宿に泊まった話

 

 それはリハーサルの時の出来事でした。当時、宿の手配は実際に走りながら、走行の終了地点が近づいてから、マラソン号が先行して宿を探して決めていました。 その宿は一見なんの変哲も無いごく普通の宿でした。晩御飯を食べる時までは・・・。

 絵画の飾られた明るくきれいな食堂にて、一同食事を始めます。片隅に置かれたテレビから夕方のニュースが流れていました。たまに画面を目で追いながら、今日の出来事や明日の打ち合わせをしつつの食事です。

 食堂には我々の他に、家族連れが三組食事をしていて、二組はテーブル席で、もう一組は小さな子供連れで小上がり席で食事をしていました。 御飯もほぼ食べ終わり、ビールなど飲みつつ寛ぐ頃には、ランナー澤本さんは、早、部屋に戻り、伊藤さんと私がテーブルで向き合って話をしていました。




 気付くと食堂には小上がりの家族連れと我々だけになっていました。いつしかテレビのボリュウームは下がり、静かになった食堂の片隅で、小上がりの子供が手にしているキャラクターのついたカセットテープレコーダーから、耳触りの良い音楽ともフレーズともつかない規則的な音階が流れている事に気がつきました。

 見るとはなしに見ていた記憶をたどると、そのカセットレコーダーは食堂のカウンターの上においてあったものを、食堂のおばちゃんが子供の家族ところへ持っていったものでした。





 カセットレコーダーから流れていたのは、ある特殊なキーワードでした。それは、某宗教団体が擦り込み(洗脳)に使う特殊な言葉でした。・・・・子供に擦り込みをしている!






 テロ行為を働き、殺人事件まで起こしたその宗教団体は連日テレビニュースに取り上げられていましたので、特殊なキーワードも聞き覚えのある言葉でした。 伊藤さんも既にそれに気付いていて、テ―ブルに緊迫した空気が漂いました。それを察したのか、間もなくテープレコーダーは止められました。我々は無言でテーブルを立ち部屋に戻りました。

 辺りを観察すると、異常にきれい過ぎるんです。古い宿なのに不自然に綺麗すぎるんです。部屋も廊下も風呂も玄関も食堂も、不自然に綺麗過ぎる宿でした。 宿のスタッフの数からして、徹底的に手間暇掛けて磨き込めるとは思えません。風呂場の蛇口など、メッキの地金が出て輝いていましたし、天井などもどうやって磨いたのか、明らかに徹底的に磨き込まれていました。




 しかしいまさらどこか他に行く事もできません。知らん顔して一泊してきましたが、寝る時なんかそら恐ろしかったです。赤いカーテン越しに見られていそうで、・・・・

 とっても怖い体験でした、飛び込みの宿には旅情がありますが、危険も多いという事で、あらかじめ宿は決めておいて走りましょうと強く進言した一幕でした。

 しばらくは擦り込みのフレーズが頭から離れずに、いやな思いをしました。
 
 
 
 
 
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b)患者さんとは知らずに重労働させてしまった話

 

 これはサポートスタッフの「のりべー」ことカメラ阿部くんの話、
出発3週間前に急遽サポートが決まった彼はプロ登録のカメラマンです。残された僅かな時間の中で、カメラ関係のメーカーさんに協賛のお願いをし、必要機材の調達に全力を尽くします。


 東京にある「ニコン」さんより機材一式借り受ける事になりました。それは高額レンズを含む、相当額になる機材群です、それを出発に間に合わせるようにと、東京にあるJPC本部のマラソン役員の方々にお願いして運んでもらったのですが、金額も相当なら、頑丈なケースに入ったそれらの機材は、重量的にも相当なものでした。


 ほとんどの機材は東京より北海道の難病センターに向けて発送してもらったのですが、一部発送できない機材がありました。その機材は直接スタート地点の宿まで持ってきていただくようにお願いして、出発前夜になりました。宿にてそれを受け取ると、それは運んでくださったのは、難病患者さんだったのでした。その頑丈なケースに収まった重い大型レンズを抱えて東京から移動してきてくれたものでした。


 「のりべー」は、いままでそうとは知らずに、「無理言ってあちこち機材を取りに行ってもらってたよ〜」しかもけっこうなお年の方ではないですか(失礼!)・・・・・・と、ショックを隠し切れず、いきなり超恐縮していました。電話で話をしていて、若くて元気な方であるような印象をもっていたといいます。


 しかしそのような事に、頓着せずに軽快なフットワークで動いてくださった山崎さんをはじめスタッフの方々のお陰で、重〜い望遠レンズを使って北海道で良い写真が撮れました。それは今、難病連のポスターになっています。


 身体は病気と戦っていても、心は若くはつらつとしている方が多いという事が後々分かってていく事になりました。




 
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c)伴走ランナー転倒の話
d)漢方胃腸薬の話
 
e)のりベーのしりの話

 

 実は激励マラソン旅の最中、常に「しりの不調」を訴え続けたカメラマンのりべー、激励マラソンゴールの後、「しりの病院」に行った所、三つの病気が併発していて直ぐに手術が必要な状態である事が判明しました。「どうりで痛い訳だ!」と納得。

三つの病気に一度にかかっているとは「グランドスラムだ!」などと訳のわからない事を言いつつ、その後まな板の上の鯉よろしく「しりの手術」を受けて無事復活しました。詳しくは判りませんが、どうやら「しりにバクダン」抱えて日本一周していたようです。

 もし日本一周中に「しりのバクダン」が破裂したら、それはそれはかわいそうな事態になっていたでしょう!旅先で戴いた沢山の旨いものは、残さず頂きましたが、それは危機的状況にある「しり」を痛めつけ続けていたのです。それにしても良く耐えました。えらいぞのりべー!


f)マラソン号がガス欠した話
 
g)マラソン号がパンクした話

 

 国道7号、酒田市内での話、マラソン隊は線交通量の多い片側2車線の広い道路の歩道をいつも通り時速8Km毎時で走行していました。 そろそろ給水ポイントになる頃だな〜というころで、前方にマラソン号が停まっています。・・・ん?いつもと様子が違います。


 このような交通量の多く、歩道のしっかりした道路での給水は、1.5Kmごとに適当な沿道の駐車スペースに入って給水するのが通常の給水方法ですが、今回のそれは歩道を半分ふさぐ形で、斜めに乗り上げた状態のままでとまっています。


 何が起こったのか事態は直ぐに判明します。沿道の駐車場に入ろうとして、勢い良く路肩の縁石に乗り上げてしまい、左前輪をバースト(破裂パンク)させてしまって立ち往生している状態でした。

 完全に空気が抜け切ってしまい、鉄のホイルが地面に接地していたので、動かせなかったという事でしたが、「大丈夫」等と言いつつ、車をその先のおもちゃ屋さんの駐車場に入れて、
 すぐさまタイヤ交換作業です。ランナーに給水している間にカーレースのピット作業よろしく素早くジャッキアップし、スペアタイヤを取り出して取り替えます。ほどなく10分足らずで交換作業終了し、また走行開始しました。



 乗り上げた瞬間は、「バンッ!」と派手な音がしたということでした、今回6400Kmあまり走行した中で、縁石にヒットしてタイヤバースト(破裂)はこの一件だけです。 6400Kmと一口に言っても、それは1.5Kmごとに路肩に乗り上げて給水しつつの6400Kmですから、単純に6400/1.5=4266.666・・・という事で、4200回以上、縁石乗り上げを行なったうちの一回失敗したという確率です。


 通常、自分で車を運転していて、突然ここがいい!と思って急に目前の店屋の駐車場に入るという事は、年に何回あるでしょう?毎日必ず一回あったと仮定しても、4200回に到達するには17年以上かかります。・・・17年分のリスクを一気にこなしておいてパンク一回だけとは優秀な方だと思いませんか?

 と、いうわけで、パンク事件ばらしましたが一応フォローもしときましたよ。・・・(笑)

 そして翌日、待望の初の休養日には、まずタイヤを買いに走る事になりました。・・・(泣)
車が乗り上げた道路の縁石の写真 破裂したタイヤを交換している写真
ここにヒット! その結果・・・
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h)宿の料金を踏み倒した話
i)ランナーが思いっきり迷子になった話(富山編)
 
j)ランナーが思いっきり迷子になった話(沖縄編)

 

その日、沖縄県庁前からのスタート時より、地元沖縄テレビの密着取材が入っていました・・・。

 一般的に、このような日本一周系の企画ものでは、様々な理由により、そのほとんどが沖縄までは来ないという事が多いという事です。 今回は完全にすべての都道府県庁を訪問するというコンセプトなので、「もちろん沖縄にも行きますよ」という考えに沖縄の方々も気を良くしていたようです。スタートからゴールまで沖縄テレビの取材が入る事になりました。

 当然、沖縄県庁に行くためには沖縄に渡るしか方法はありませんが、フェリーでのんびり往復している時間的余裕は全くありませんでした。 マラソン号と伴走バイクは鹿児島に置いて、スタッフ4人で飛行機で沖縄入りし、現地のスタッフの方に、サポート車両を借りてのマラソンとなりました。



 一台の車に3人乗って、ランナー一人をサポートしていきました。
以前のリハーサルで伴走バイクが壊れてしまった時以来の車だけのサポートです。 実はそのリハーサルの時は微妙なミスコースで済んでいましたが、一度大きくはぐれてしまうと、車1台でそれを解決するのは条件によっては相当な困難と危険を招くという事が判っていました。そこで沖縄でのランナーの道案内は、要所要所で、無線機を持ったスタッフを下ろして道案内するという方法でサポートしていきました。



 県庁をスタートし、平和記念公園、平和の礎、ひめゆりの塔、等、所々で、沖縄テレビのカメラが先回りして撮影している中を走りぬけ、順調に走行していました。そして最終章の沖縄ゴールの様子まで撮影して、大至急テレビ局に帰って編集し、夕方のニュースに流して完了という段階になりました。

 沖縄ゴールは、那覇市の南に有る奥武山公園です。ひめゆりの塔から国道331号線一本で終了点の奥武山公園に行く事ができます。一本道なら楽勝!と、思われそうですがそうではありません。油断できないんです。




 国道331号は所々、旧道と新道が交錯する、やや複雑な道路です。そして交通量も少なくありません。特に那覇市に近付くにつれて増大していきます。

 最終給水ポイントで、「あと2km程度でゴール地点の奥武山公園です」「ゴール地点には沖縄テレビの取材クルーが待ち構えていますので、歩道橋を越えたところに有る公園の正面入り口より右折して公園内に突入します」「我々は歩道橋の所で待っています。」という最終打ち合わせをして、ラストランがスタートしました。テレビクルーは時間的に夕方のニュース放映に間に合う時間にゴール出来ることを喜んでいました。




 サポートカーに乗って先行し、途中で間違いそうな所は無いかと注意しながら進みます。国道331号は途中、空港に向かう国道332号線と合流した後、約500mで、ゴールの公園になります。そこは米軍基地の正面にあたる場所で、辺りに大きな建物の無い見通しの良い場所でした。大きな横断歩道橋の下でランナーを待ちます。テレビクルーも歩道橋の上にもカメラを据えて、望遠レンズで遠くから走りこむランナーを待ち構えています。夕日が海面に溶け込む美しい時間帯です。

 通常であれば、約10分程度で到着しますが、20分経っても姿を見せません。25分を経過した頃、サポートカーが様子を見に走りました。テレビクルーがあわただしく電話でやりとりしています。



 30分経過、35分経過。40分経過、・・・・・

すっかり日が陰って、テレビクルーが局に引き上げた後、ランナーが走り込んできました。国道332号を沖縄空港方向に走っていたとの事でした。

 とりあえず事故でなくて良かった、と思ったのが正直な感想でしたが、
日本一周6400Km走った中で最大の失敗でした。やはり何らかの形で伴走しておく必要があったとの反省を残しました。





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k)風を引いた話
l)待ち合わせ時間をすっぽかした話
n)道を間違えた話
m)民宿村岡の話
o)患者さんのお宅訪問の話
p)歓迎の宴会の話
 
q)「なげるダンボール下さい」って?

 

四国の阿南市での話
 旅も後半になり、季節も秋から冬へと移り変わりに応じて、あらかじめ用意していた寒さ対策のための装備を発送してもらい、かわりに必要無い装備を札幌に送り返して、マラソン号の中を整理をした時の事です、宿の近くにある商店に発送用のダンボールを調達に行きました。


 町の電気屋さんに入って、こう言いました。「旅の者ですが、荷物の発送に使いたいので」「なげるダンボールをいただけないでしょうか?」すると、投げるダンボールはうちには無いが、捨てるダンボールだったら店の外に積んであるからもっていってもいいよ。・・・と店主


 ハイ、捨てるダンボールが欲しいので、少し分けてください。と言ってダンボールを貰って帰ろうとした時に店主曰く、今日は不思議な日だ、ついさっきもあんたと同じ事を言う若者がやってきたばかりなのさ、「投げるダンボールって何なんだい?」


 さてはのりべーのやつもダンボールを貰いに先にここにきたんだな〜、、、北海道では、ゴミをゴミステ―ションに出すような場合には、ゴミを投げるという表現を使う風習があるのということを説明しました。


 北海道では、降り積もった雪をどける事をあらわす表現で、「雪かき」や「雪投げ」という言葉を使います。スコップ持って雪をすくって遠くに投げるという動作を繰り返すため、雪投げと言う言葉が一般的になっているのもと思われますが、必要無いものを、邪魔にならないところに移動させること、雪を道からどける事、ゴミを出す事も投げるという表現を使います。


 野球のピッチャーが、セットポジションから振りかぶって第一球を「投げた!」・・・の投げるという意味ではありませんが、近いものがあります。(笑)

 季候風土の違いから来る、表現方法の違いというのは日本中いたるところにあるもので、
関西では「ゴミをほかす」という表現を使ってましたが、「ほおる」とは「投る」という事で、投げるという事ですから、遠く離れた地域なのに案外近い表現を使っていることもあるのですね。



 
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r)レストランの話
s)穴の話
t)沖縄の夜の話
u)たんすにゴン!の話
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