支笏湖一周カヌーツーリング2002
おまけ 
表題に戻る
写真は風不死岳頂上から望む支笏湖と対岸の恵庭岳です。
  支笏湖へは札幌市内よりサイクリングロードが整備されていて、高校生の三年間、毎年春の強歩遠足で札幌から全部(約35km)歩かされてました。(笑) 
 支笏湖は約4万年前の火山の噴火によって作られた周囲40Kmのカルデラ湖です。その後の恵庭岳と風不死岳の噴火によって現在の上下が潰れたような形になったようです。最大水深は360m平均水深は260mもあり、まるで丼(どんぶり)のように急に深くなっているので琵琶湖に迫る程の貯水量があります。水量に比べて表面積が小さい為、外気温の影響を受けにくく冬も凍りません。そして夏も温まる事が無く、真夏でも手がしびれる程冷たいのです。

 そのため間違って支笏湖に落ちてしまうと寒くて震えあがってしまいます。すぐに水から上がれたらいいのですが、もし何らかの理由で陸に上がれない状態が続くと・・・

 5分後には手指がしびれ出し、10分後には震えが止まらなくなります。30分後には唇が紫色になって運動機能が低下します。それを「低体温症」(ていたいおんしょう)(ハイポサーミア)といいます。ひどくなると命に関わります。

 通常は船がひっくり返っても救命胴衣(ライフジャケット)をつけてさえいれば溺れる事が無いので安全なのですが、支笏湖の場合は低すぎる水温によって、体温を奪われてしまい短時間のうちに低体温症にやられてしまうのです。

 その急激に深くなる湖底地形の為、もし救命胴衣を着けずに支笏湖に落ちて溺れてしまうと、短時間のうちに力尽きて光の届かない深部まで果てしなく沈んでいってしまいます。通常ある程度の時間が経過すると、細菌の繁殖による腐敗によって体内にガスが溜まりその浮力によって浮かんできますが、天然の冷蔵庫に保管されているような状態になり浮んでくる事はありません。支笏湖の行方不明者はまず発見されることはありません。

 今回は水中に放り出されても低体温症にならない為に「ドライスーツ」という防水服を着用しています。それは水中で断熱効果を発揮して寒さから身体を守ってくれる装備ですが、カヌーの上で直射日光を浴びつつパドルを漕いでいる状態では、水も風も通さず通気性も全く無い、まるで「サウナスーツ」を着ているようなもので暑くて暑くてたまらないのです。

 そこで安全な岸の近くでは、ドライスーツの着脱用のジッパーを開けてかろうじて通気しておき、風や波が出たり、岸から離れた場所を進むときはしっかり閉めて転覆等に備えているのです。もし天候が急変して湖の中央に向かう「出し風」にやられて転覆してしまった場合には、競技用のストラップタイプの大型足ヒレを装着し、カヌーを捨てて岸に向かう用意をしていました。カヌーには防水のストロボライトを付けて放し後で動力船で回収します。

 さらに悪い事態に備えて、あらかじめ会社に地形図の拡大コピーの白地図の計画書を託して「遭難対策本部」としており、カヌー上から見える恵庭岳と風不死岳の山頂の角度を定期的に携帯電話で報告を入れて白地図の上に線を引き位置を書き込んでもらいながら進んでいました。もし音信不通になった場合の最終リミット時間を決め、救助をお願いする予定の動力船をもった業者の連絡先と、そのてはずを整えていました。基本的に湖岸ぎりぎりを進んでいけば良いのですが、急峻な湖岸を持つ支笏湖はどこでも上陸出来るわけで無く、単独行動ゆえの未知の危険に備える必要がありました。
 支笏湖を単独でカナディアンカヌーで一周するのは危ない事です
表題に戻る
下の写真をクリックしても戻ります