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 高速船である事から航海中は強風に為左右の船縁には出られません、外に出られるのは後部デッキの一部のみです。昨年までは、後部デッキ端のデッキチィアーで丸一日過ごすのが楽しみでした。乗船と共に甲板上に設置してあるデッキチィアーを良い位置に構え、そこで30時間を過ごします。陸上と違い「蝿や蚊」がいませんから、潮風に吹かれながら星空の下で眠る事ができるのです。

 目を閉じれば目蓋まで一ミリ、目を開けば恒星まで150光年という夢と現実の狭間をうとうとしつつ、やがて漆黒の闇が群青色に染まり、星が一つ一つ去っていき朝焼けと共に水平線の彼方から太陽が昇ってきます。右舷から上がった太陽型日時計は刻一刻と時を刻み、寝坊な旅人を強力に直射して起こそうとします。そのたびに、石の裏に生息する虫のように、日陰へともぞもぞと逃げて、しぶとくまどろみ続けます。

 いよいよ暑くて辛抱たまらなくなった頃を見計らったように、後部甲板でオープンするビアホールの売店まで10メートル歩いて生ビールをゲット、太陽に乾杯します。
 
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