おまけのおまけ「バイクを倒すという事は・・・」
実際の転倒の図
 山奥で遊んでいるとたまに転んでしまう事がありますが、そんな中でのちょっと面倒な転倒例です。
泥の中に横たわるバイクの写真
1)
 とある山中で野遊びしていてコロンと寝転んでしまいました。 しかし、ここはあまりお昼寝には向かない場所です。

 下になっているエンジンシリンダーが柔らかい路面に刺さり込んでしまいました。杭を打ってこの場に固定されているような状態になってしまいました。

 それでも刺さり込んだシリンダーを軸にして起こしやすい位置に時計回りに60度程回転させた状態です。
泥に埋まっているタイヤの写真
2)
 普通に引き起こそうにもタイヤが粘土質で滑って逃げるため起こす事が出来ません。
またシリンダーが泥に食い込んでしまい完全に横倒しになっているため車体の下に身体を入れることが出来ずに、より引き起こしが困難な状態になっています。
 
泥地に倒れているバイクにハーネスを取り付けた状態の写真
3)
 次の手として、主にアイスバーン等の冬場の悪条件での引き起こし用に装備している「起こし紐」を使います。まずは泥にめり込んで下敷きになっている左ステップにフックを掛けて車体側の「起こし紐」を取り付けます。次に両肩にたすき掛けにした身体側の「起こし紐」に連結して、一番力が入る位置に調整します。

 次に足のふんばる位置、両手の掴み所、力を入れる方向、起こした後の処理、失敗したときの逃げ方などを考えます。重量挙げ競技のように一回で成功できるように集中して段取りを付けます。

 そして車体が反対側に滑って逃げていかないように、手前に引き寄せながら一気に引き上げます。 寄せて上げるというどこかで聞いた事あるような作戦で通常は起こす事ができるんですが、冬場と違い足元がぬるぬる滑って力が逃げて起こす事ができませんでした。
 
ハーネスを使って泥地から引き起こしに成功したバイクの写真
4)
 作戦を変えてハンドルから支点を取ってようやく引き起こしに成功しました。しかしハンドルグリップにはヒーターの電熱線が入っていて過度な力を加えると断線してしまう恐れがあるので通常は使わない方法です。

 寝転んでから起るまで10分以上悪戦苦闘をしてしまいましたが、このバイクは寝転んでも燃料が漏れ出さない構造になっているのでしばしのお寝んねも問題ありません。また、バッテリーもお寝んね対応品を積んでいます。 このバイクにとってこういった状況は設計段階から想定内の使用状況です。
 
泥地からの脱出にあがいてどろどろになったバイクの写真
5)
 引き起こしに成功しても、このツルツルタイヤで泥地から脱出するのはなかなか難儀します。 そもそも舗装道路専用に作られたツルツルタイヤで、未舗装路に入っていく事自体が違っているとの解釈も出来ますが、

 基本的に道具は使いようで、そんな限界点の低いタイヤで悪路に踏み入るのも面白いのです。ちょっとした事でやられてしまいますが速度も低いので大事にならずに笑い事になるのが良い所です。 限界の低いタイヤの限界を探る?こそ練には最適なテーマです。(こそ練=こっそり練習)
 
はまっていた泥地から脱出して土手を駆け上がったバイクの写真
6)
 そもそもの顛末としては、・・・土手に上るアプローチに失敗してしまったんです(笑)
 下見もせずに、ぱっと見で行けると一気に駆け上がろうとして、走行ラインを読む事に集中して足元がおろそかになってしまいました。

 まだまだ修行が足りませんね〜(笑)
  
バイクを倒す事について・・・ 
  このバイクは自然の中で遊ぶために作られた丈夫な道具です。転倒に備えた防具を装備していて、多少の転倒はものともしません。しかしぞんざいに扱うと簡単に壊れてしまう繊細な部分もあります。 道具は作り手の意志に関わらず、どう使うかは使い手の考え一つだと思います。 

 このバイクも設計コンセプトに見合う使い方をするのか、あるいは磨いて光らせるような使い方をするのかは、それぞれの持ち主の付き合うスタンスによる所です。 そんな道具に対するスタンスを現している好きな一文があります。それは学生の頃にバイトして買った当時世に出たばかりのアラヤ工業製のマウンテンバイクの取り扱い説明書の冒頭に書かれていました。

 「この自転車は悪路を走る為に丈夫に作られていますが、愛情を持って酷使してください。」と書かれていました。その一文に道具の作り手の思いと道具の本質が集約しているように思いました。

 でも「酷使する」は解りますが、「愛情をもって」とは何でしょう?それは猫かわいがりをしろというのではなく、機械的メンテナンス(整備)をしっかり手を掛けた上で、丁寧に酷使するという事だと解釈しています。 以後道具に関する基本的なスタンスは「愛情をもって酷使する」の一文です。このバイクも同じで体力の続く限り機械的寿命が尽きるまで、しっかり整備をして修理をして酷使し続ける考えで装備しています。

 ・・・というわけで、かかしの横にそっと寝かせて写真を撮ったところで、相棒は怒ったりしないんです。むしろ寝転んでかかしと顔を見合わせて一緒に笑っています。
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