次へ
1-4)
 小樽の町明かりが豆粒に変わる頃、月の元気が倍増します。今夜は月の綺麗な航海になりそうです。

 波の穏やかな星降る夜は船室に入ってしまうのがもったいない。ビールをチビチビ飲りながら潮風に吹かれ続けます。

 左舷の対岸には積丹半島の断崖に点在する小さな漁村の明かりが見えては消え見えては消えていきます。一万七千トンの巨大フェリーは積丹のウニ達や眠っているホッケ達の上を南に向かって爆進しています。そのスピードに月の光が黒い海面にぶつかって飛び散り、そのまま沁みこんでいきます。

 無理をしなければ長旅には出られない、出来る無理ならしておこう、いずれにせよ両手にはそれぞれ一つづつしか物を持てない掴めない。

 消灯になって乗客が寝静まったら、デッキの片隅にマットを敷いて密かに寝の体勢へ

 星空を布団代わりに目を閉じれば、あわただしい日常から非日常の旅人への起動スイッチが作動します。次に目覚める時にはプチ放浪の旅人モードに切り替わっているはず。
 
次の写真に進む
表題に戻る・・・・・・・・・・