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15-2)
 雲ひとつ無い青空に白い筋が現れた。上空を飛行機が飛んでいる。飛行機雲が四本伸びているという事はエンジンを四基積んだボーイング747型機か?最大離陸重量は300トンを越える大型の飛行機だ、一万メートル上空を推力30トンのジェットエンジン四基が力を合わせて時速1000kmの速度で飛んでいる。

 対するこちらは全長224m一万六千トンもの巨大フェリーが、一万馬力のエンジン四基が力を合わせて時速55kmで疾走させている。

 いずれも現代文明の技術の結晶だ、空の雄と海の雄、土俵は違えどそれぞれに同型エンジンを4基積んで万一のトラブルに備える姿勢を持つ安全性の高い設計の乗り物だ、それらは難しい技術を駆使する沢山の人々支えがあってこそ安全に運行されている。

 しかし飛行機に乗っているとそれが時速1000kmもの速度で飛んでいることなど全く感じない。フェリーに乗ってもどれほどの技術によって時速55kmもの速度で運行しているのかも判らない。いったい何人の乗組員が安全確保にあたっているのかも気づかない。さもあたりまえのようにお金だけ払って当然のように乗っているだけだ、

 きっと日本という国も国際社会の荒波の中を、すごい速度で突っ走っているんだと思う、その動力源も、舵取りの難しさも、水面下で支える人達の努力も、全く意識せずに、あたりまえのように乗っているだけかもしれない。

 そして墜落事故がおこったり転覆事故が起こったりと、決定的な事態が発生した時に初めて騒ぎ出す。そしてそれが過ぎれば、また忘れてしまう。

 これを吸入・圧縮・爆発・排気と4サイクルエンジンの行程のように規則正しく繰り返すのが文明とか歴史の本質のような気がする。


 海を見て、空を見て、好き勝手な事を考える時間。
 
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