十五日目 / 十五

日本海の船旅 20時45分小樽港着 札幌 
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8月24日
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1)
 朝から快晴のデッキで一日海を見て過ごす。午前10時15分頃日本海上で上りと下りのフェリーが交錯する。二隻の船は最新鋭の推進装置を備えた世界最大級最速のフェリーだ、 相対速度は時速100kmを越えるのであっという間に小さくなって見えなくなる。

 その推進力はディーゼルエンジンの軸出力で直接プロペラを回す動力と、後方同軸に配置されたプロペラを電動モーターで回す動力を複合させて進むハイブリッド推進装置を持っている。前後の同軸プロペラは逆転する二重反転プロペラを構成していて効率が高く、船底の形も抵抗の少ない形状をしている。すべては高速運行するために考えられた最新のシステムだ、

 後方の海面を観察すると以前の舟で見られた大きくV時型に発生していた波が立たなくなっていることがわかる。

 しかし、水面下のプロペラやポッド式推進装置は人目に触れる事は無い。擦れ違うフェリーを見ていて、その異常な速度が気になって調べた結果わかった事、・・・
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2)
 雲ひとつ無い青空に白い筋が現れた。上空を飛行機が飛んでいる。飛行機雲が四本伸びているという事はエンジンを四基積んだボーイング747型機か?最大離陸重量は300トンを越える大型の飛行機だ、一万メートル上空を推力30トンのジェットエンジン四基が力を合わせて時速1000kmの速度で飛んでいる。

 対するこちらは全長224m一万六千トンもの巨大フェリーが、一万馬力のエンジン四基が力を合わせて時速55kmで疾走させている。

 いずれも現代文明の技術の結晶だ、空の雄と海の雄、土俵は違えどそれぞれに同型エンジンを4基積んで万一のトラブルに備える姿勢を持つ安全性の高い設計の乗り物だ、それらは難しい技術を駆使する沢山の人々支えがあってこそ安全に運行されている。

 しかし飛行機に乗っているとそれが時速1000kmもの速度で飛んでいることなど全く感じない。フェリーに乗ってもどれほどの技術によって時速55kmもの速度で運行しているのかも判らない。いったい何人の乗組員が安全確保にあたっているのかも気づかない。さもあたりまえのようにお金だけ払って当然のように乗っているだけだ、

 きっと日本という国も国際社会の荒波の中を、すごい速度で突っ走っているんだと思う、その動力源も、舵取りの難しさも、水面下で支える人達の努力も、全く意識せずに、あたりまえのように乗っているだけかもしれない。

 そして墜落事故がおこったり転覆事故が起こったりと、決定的な事態が発生した時に初めて騒ぎ出す。そしてそれが過ぎれば、また忘れてしまう。

 これを吸入・圧縮・爆発・排気と4サイクルエンジンの行程のように規則正しく繰り返すのが文明とか歴史の本質のような気がする。


 海を見て、空を見て、好き勝手な事を考える時間。
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3)
空いっぱいに雲がやってきた
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4)
水平線を見ながら転寝をする時間
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5)
雲と一緒に夏が去っていった
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6)
大浴場で一風呂浴びて、晩飯の時間だ、
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7)
バイキング、バイキング、何を食べようか?
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8)
おっ、ザンギがあるぞ
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9)
いろいろあって目に楽しい
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10)
 デザートもいろいろある
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11)
結局カレーを食べている。(笑) 舟のカレーは旨いのだ、
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12)
 レストランの窓から夕日と入れ替わりに積丹沖のイカ釣り船の漁火が見える

 今回は長距離フェリーを3回、短距離フェリーを2回乗船し、合計2500kmの海上移動でした。それは四国・九州をバイクで走り周った距離とほぼ同じです。
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13)
 小樽港に入港すると、案内に従って車両甲板に下りて下船の準備を始めます。
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14)
バイクはしっかり固定されています。
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15)
 バイクに荷物を積み直します。荷物の中には一升瓶を二本積んでいます。万一事故にあって転んでも瓶が割れないように積み込みます。
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16)
 紙パックの焼酎を緩衝材に一升瓶をパッキングします。九州から連れてきた芋焼酎と、四国から連れてきた栗焼酎と、札幌から一緒に旅に出た芋焼酎が仲良く三本並んでいる。
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17)
 昨今北海道を旅するライダーは著しく減少していますが、女性ライダーの一人旅は一定数を保っているように思います。以前は体育会系の女子が勇ましくバイクを駆っていた印象が強いのですが、昨今は麗しい?華奢に思える?一見バイクとは無縁な印象を受けそうな女子が見た目もばっちり決めてバイクを駆っています。

 それは男勝りの背伸びをしている訳では無く、恐ろしく腹が据わっていたり、純粋に真っ直ぐ何かに向かっていたりと、それぞれに男どもの思考構造と違った感覚でバイクを捉えているようです。共通している傾向としては、細かな事柄にピーピー言わない、痛みや不都合を許容する強さを持っているように感じました。これはややディープなバイク系女子数名と飲んだ時の印象です。

 女が強くなったのか?男が弱くなったのか?単なる目立つ比率の問題なのか?
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18)
 上陸して最初の信号で並ぶツーリングライダーの皆さん。これから北海道ツーリングの始まりです。昨今のライダーはガイドブックを見て携帯電話で予約して効率よく見所を周るというスタイルが一般的なようです。

 以前ミツバチ族と言われたような、とりあえず寝袋一つ括り付けて北海道に渡って来て、ライダーハウスを根城に、気の合う連中とにわか集団を作って花から花へとブンブン集ってブンブン飛んで行くような形は少ないようです。

 事前に情報がたくさん手に入る事は良い事です。現場で困る事が無くなったり、無駄が無くなったりと、何処でも助けが呼べたりと、便利な時代になりました。

 しかし、カーナビが進化して便利になったら道を覚えなくなったように、何か便利の代償を失っているような気がします。

1)誰かに提供された楽しみを、設定された通りに効率良く沢山楽しむ。
2)たとえちっぽけな楽しみでも自分で見つけ出して一つだけじっくり楽しむ。

 情報をうまく使っているのか?躍らされているのか?その境目は難しい。

 本来人には十人十色それぞれの楽しみ方があるはずです。

 バイクは困るのが面白い、困るから考える、困るから助け合う、そんな楽しみ方もあったりします。・・・しかしこれは理解されにくい。この話をするとたいてい「ムチとロウソク」の話に置き換わってしまう(笑)
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19)
 観光客の目があるうちに札幌の街を走ってみる。やはり碁盤の目に作られた道は走り易いし分かりやすい。札幌は適度に都会で適度に田舎だと思う。自分にはちょうどいい、好きですさっぽろ。
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20)
 日本三大がっかり名所という札幌時計台、確かに宣伝されているイメージとはだいぶ違うね、(笑) 建設当事は周囲に突出した20mを誇る高い建物だったはずが、現在ではこの状態に、この100年余りで起こった世の中の激変をこの場所で見てきた生き証人だ、言葉がしゃべれたら何を語るのだろう?

 100年後の時計台はどう生きているだろう? 鐘の音を聞いて旅の〆とした。
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