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3-16)おまけの東北ツーリング
 温泉で温めた身体がすっかり冷え切った頃、小さな漁村に着いた。

 焼き魚でご飯でもと思って赤提灯に吸い寄せられる。暖簾をくぐると店の雰囲気に似つかわしくない若い女性が、暇そうにカウンターで携帯電話をいじっていた。聞くと店主の代わりに店番をしてるようだ。ここはおでん屋さんだった。魚は無い。バイク旅の者で酒は飲めないけどお腹空いてるから何か適当にみつくろって、と発注するもアドリブが利かない(笑)、裏で何処かへ電話を掛けている。

 店主のおばちゃんの息子の所に嫁いできた嫁さんが、今日は暇だろうからと店番をさせられていていたものだった。 おでんを突つきながらカウンター越しに少し話をした。

 若いはずだ、先月隣町から嫁いできたばかりの新妻だった。ずっとその町で生まれ育って始めて町の外で暮らし始めたという、地図では僅かしか離れていないように思える二つの町も、住むとなると全然違うと言う。友達も全部むこうだし、町の規模もかなり違う、遊び盛りの若さには辛いものがあるようだ。

 旅の話や食べ物の話や方言の話で一盛り上がりして店を出た。気さくで柔らかそうなお嫁さんは、きっとすぐに新しい環境に馴染むだろうと思った。
 
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