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83)元旦宗谷岬ツーリング2010(その三)_42)
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 やってくるバイクの種類にも時代の変化が見られます。
今回は原動機付き自転車が7台、二輪の軽自動車が3台、自転車が1台集っていました。

 かつては250cc(二輪の軽自動車)のオフロードバイクが主流でした。 それはオフロード(悪路)を走破する基本性能を備えていて、出力、重量、走破性とバイクの機動性を最もバランスよく発揮できる車種です。

 北海道の幹線道路は本州に比べて早い速度で流れている傾向があります。 特に郊外の幹線道路では冬でも早い速度で流れている実状があります。

 250ccのオフロードバイクは、早い交通の流れに乗っても安全に走れる動力性能を持ち、悪路に直面しても安全に走破できる操縦安定性を備えています。

 一般的な自動車は時速100kmで連続走行出来る性能を持っています。
その時速100kmの速度から急制動できるブレーキ性能も合わせ持っています。
ブレーキを作動させる油圧装置は独立した2系統を持ち、どちらか一方が故障しても残った方で安全に止まれるように作られています。

 それらは道路運送車両法に基づいて定期的に検査され、検査に合格した車両のみが公道を走る事が許されます。(車検制度)

 バイクについても同様で、「二輪の軽自動車」と「二輪の小型自動車」も二輪ながら自動車です。通常の自動車に順ずる性能を持っています。
道路運送車両法による車両区分
車両区分 原動機排気量 車検の有無
二輪の軽自動車 126cc以上250cc以下 無し
二輪の小型自動車 251cc以上 有り
軽自動車 660cc以下 有り
小型自動車 2000cc以下 有り
普通自動車 2000cc以上(ディーゼルを除く) 有り

 これに対して
 
 50ccの原動機付き自転車は、低価格、低燃費、低維持費と、三拍子揃った時代が求めるエコな乗り物です。手軽さを追求したその車体は、時速30kmで走って止まる事を基準に作られていて、自転車に近い性能です。

 郵便配達や蕎麦屋の出前など市街地の近距離交通で使うことを目的にして作られているので、郊外の幹線道路を時速60kmで流れに乗って走る性能はありません。

 ・・・ところがこれは机の上の話です。実際には原動機付自転車でも条件が良ければ車種によっては時速60kmで走れてしまいます。 これは夏の北海道を旅する原動機付自転車の多くに見られる暗黙の事実です。

 以前は時速100km近く出す事が出来る原動機付自転車も存在しましたが、あまりに危険なので速度制限装置が付けられるようになりました。

 時速30kmで設計された車体で時速60km走行すると、それは車両性能的に、かなり無理をしている状態です。速度が倍になると運動エネルギーは4倍になります。いざという時にそれを受け止めるだけの性能がありません。

 余裕の無い事を続けていると事故の確率が高まります。特に冬道では危険度が大幅に高まってしまいます。

 車両性能的に交通の流れに乗る事の出来ない原動機付自転車等で、冬の北海道を走る場合には、速度差の大きい周囲の交通環境に対して、安全に配慮した運転をする事が重要です。
 
原動機付自転車が考慮すべき状況
アイスバーン上で立ち往生している大型トレーラーの写真
スリップして立ち往生しているトラック
雪を使ってトラックに馬を引いて乗せている写真
馬を乗せているトラック
 重量のある車は坂道で一度惰性を失ってしまうと厳しい事になる。特に圧雪アイスバーンの峠道では迷惑野郎(低速で轍の中を両足垂らしてよたよた走る)に遭遇してしまうと、対向車が途切れても、一度落ちてしまった車速を直ぐには加速出来ないので、簡単に抜く事が出来ない、最悪そのまま車速が落ちスリップして立ち往生する危険がある。  不安定な状態で荷台に乗っている馬を怪我をさせないように運転は慎重を極める。馬は骨折=安楽死だ、低速で轍の中をよたよた走る迷惑野郎を簡単に抜く事が出来ない、後ろには長い渋滞が発生する。渋滞の後ろでは迷惑野郎が見えないので渋滞の原因がトラックにあると思い、そのうち業を煮やした後続車が危険な追越をかけはじめる。
大型車一台分の幅しかない雪道の写真 道幅ギリギリですれ違う大型トラックの写真
日勝峠 日高側3合目 日勝峠 日高側4合目
 国道274号日勝峠は現在でも道路改修工事が続いており、車線を分離した区間などが存在する。この区間では車幅分しか道幅が無く、物理的に追越が不可能になる。
 
 国道274号日勝峠の核心部は道幅も狭く、車線を割る事を許されない道路設計になっている。登坂能力が低く低速走行続ける原動機付き自転車等を簡単に追い抜く事が出来ない。
 
本題
 安全ではない道路状況を安全に通行するには「自分だけ」という視点では実現しません。周りの交通共々協調して安全に通行する。 周りの交通環境に協調する能力の無いマシンでは、 1)周りに迷惑を掛けないで済むルートを走る。 2)交通の流れを妨げないように配慮する。 正常な交通の流れを乱さない事が自分自身を守る事に繋がります。

 基本的に北海道で冬道を運転するドライバーは、過去にスリップして衝突したり雪山に突っ込んだりと大なり小なり怖い思いを経験した上でハンドルを握っています。 あるいは冬道は怖いからなるべく運転しないというドライバーもいます。 それぞれに冬道の怖さを知っています。

 ところが、本州からのレンタカー観光旅行者のように、北海道特有の交通事情を知らずに走っている車もあります。

 下の写真は2009年9月撮影の中標津町開洋台のレストハウス内の張り紙です。
北海道外からの旅行者に対する注意喚起ポスターの写真
 ポスターにある8月1日の更別村の事故は、空港でレンタカーを借りて僅か1時間後の事故です。状況によると事故原因はレンタカー側の一時停止の見落としのようです。 7月3日の中札内の事故もレンタカー側の一時停止の見落としのようです。 このような事故を十勝型事故といいます。

 極端に交通量の少ない田舎道では、うっかり一時停止の標識を見落として交差点を突っ切ったとしても、他車に出会う確立は低く、もし出会っても両車が交わるタイミングが1秒の半分でも違っていれば、衝突する事は無かったはずです。 しかし、事故とはそんな悪魔のタイミングを狙って起こります。

 これは極端な例ですが、ちょっとしたミスが重大事故に直結した実例です。


 ※ 実はそれに関連してもう一つ大きな懸念材料があります。

 近年法律の改正もあり、北海道をレンタカー観光をするアジアからの個人旅行者が急増しています。 それは官民一体となった観光振興戦略として展開されているのもです。

 免許制度も交通環境も根本的な交通安全に対するスタンスまでもが全く異なるドライバーが厳しい冬の交通環境に混じる可能性が出てきました。

 実はアジアからの旅行者が運転するレンタカーの事故は増えているようです。 今の所小さな事故で収まっているようですが、小さな事故の頻発はその先を暗示する現象です。
 
事故は不運なタイミングを狙い済ましたように起こります
 自ら危険を回避する能力が乏しく、衝突を防ぐのは、もっぱら追い抜かされる運転者の注意力に頼るしかない原動機付き自転車は、被害者になりやすい傾向があります。 追い抜かされる時、もし、うっかりミスで引っ掛けられたら、即転倒に繋がり、命に関わる重大なダメージを受ける可能性があります。

 突然、追い越しざまに引っ掛けられて転倒させられてしまえば、何が起きたのか判らない一瞬のうちに、路面に叩き付けられる事になります。 加害車両のナンバーを読み取る事は難しいでしょう、

 そのまま路外の雪中に弾き出されてしまえば、郊外の道路は交通量も少なく、しばらく発見されないかもしれません。視程不良の降雪中にあっては、すぐに雪に覆われてしまうでしょう。 後に発見された時には既に手の施しようも無く、「ハンドル操作の誤り」などの適当な原因を付けられて、単独事故として人生を終わる結果になるかもしれません。

 後処理する側としても、そのほうが手間が少ないという現実があります。

 また、後に加害車両が特定できたとしても、運転者に「気が付かなかった」と主張されてしまえば、それを覆すのは容易な事ではありません。 ましてや冬の吹雪の中などでは、気が付かなくても仕方ないという認識の方が強いでしょう。

 さらに、ライダーが命を落とすか、頭部にダメージを受け意識障害などの重篤な後遺症を残した場合、運転者に「バイクが先に転んで滑ってぶつかってきた」と主張されてしまえば、それを覆すのは難しいでしょう。

 理不尽な形でバイク側に事故の責任を押し付けられて、それを覆そうと裁判を起している実例は少なくありません。

 そういった理由から、交通の流れに乗る能力の無い「原動機付き自転車」等で、真冬の北海道を旅する行為には、ライダー本人が防ぎようの無い、目に見えない大きなリスクがあります。
北海道には理屈が通用しない厳しい一面がある
層雲峡ビジターセンターのヒグマの剥製の写真
厳しさゆえのやさしさもある
芽室町の道端のオブジェの写真
厳しさゆえの温もりもある
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 Wellcome 冬の北海道!・・・全ては自己責任の下で
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