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 展望の高台でバイクを停めて一服タイム。海の向こうに利尻島が見えています。 雪雲に霞む利尻山を見ながら今年行った九州の屋久島を思い出していた。
屋久島の旅
 北海道から屋久島に行くには、千歳〜東京/東京〜鹿児島/鹿児島〜屋久島 と、一日に飛行機を三回乗り継ぐ事になる。その時、折からの低気圧の影響で千歳〜東京/東京〜鹿児島までは飛んだものの、鹿児島〜屋久島の空路が全面欠航になった。急遽チケットを払い戻して鹿児島港から屋久島まで高速船で海を渡る事に、

 高速船は「ボーイング929」というボーイング社が軍事目的に開発した水中翼船で7000馬力のガスタービンエンジンを二基搭載し、ウオータージェット推進で時速80kmで揚翼浮上航行する。

 それの民生版として川崎重工がライセンス生産している旅客船「カワサキジェットフォイル」という船が鹿児島〜屋久島間に就航している。航行時は水中翼により船体が水面より完全に離水し浮遊している状態で、滑るように、飛ぶように、滑空するように、滑水?する。

 飛行機が飛べないような悪天候荒海の中を時速80kmで浮遊して巧みリーン(船体を傾ける)して波頭を交わしながら滑走する。波の高さは2m以上、時折避け切れずに船首部分に波頭が叩きつけ、衝撃と派手な飛沫をあげている。

 飛行機の乗客が流れてきた為か満席(約250人)の高速船は「鹿児島湾から外海に出た時点で、もし危険と判断した場合には鹿児島港に引き返す」という運行条件が付いての出航だった。

 案の定鹿児島湾を出ると容赦なく大波が襲ってきた。高速船は大きく船体を傾け巧みに交わしながら、波頭の低い所を縫うように荒海を疾走する。 たまたま前列右端の座席だったので前方を注視してその状況を楽しんでいた。

 目が慣れてきた頃、やがて素人目にもやばそうな大波が迫ってきた、大波は強風で波頭が飛ばされて白く見えるので遠くからでもはっきり見えた。それは横一列に長く迫ってきた。

 たぶん大丈夫だろうと、楽観しながらも座席の肘掛を握る手に力が入る。 「ぶつかる!」次の瞬間ドカンともザブンともつかない激しい音と衝撃で大波に衝突した。客室に飛び散る悲鳴を黙らせる程の舌を噛みそうな衝撃で急減速し、数回バウンドして船首から海中に突っ込んだように舟の頭から大波を被った。
大波に突っ込んだ
 船が停止し、悲鳴の余韻のまま荒海に任せて小船のように揺られている。船内にはつかの間の安堵感にも似た空気が漂った。

 「これで鹿児島港に引き返す」誰しもそう思っていた。 そこに船長のアナウンスが流れた 「お客さん、絶対に席を立たないで下さい」 その落ち着き払ったドスの利いた声は、「シートベルトをしっかり締めて下さい 本船は再びテイクオフします」と言い放った。

 さすが九州男、拍手したい気分だった。二基のガスタービンは金属音を響かせ荒波を掻き分け加速していく。木の葉のように揺れていた船体が水中翼で浮上するとぴたりと安定し、再び高速滑走状態になった。

 荒海を時速80kmの速度で大波を交わして突っ走る。船は驚く程振動も揺れも無く、極めて滑らかに疾走している。 それは広大な草原に続く一本道をバイクで疾走しているような感覚だ、緩やかなカーブを車体を傾けて滑らかに疾走しているような感覚だった。
ゲボの海
 そんな浮遊感覚を楽しむうちに外海を渡り切り宮之浦港に到着した。気が付くと就学旅行生が後ろの方でゲボの海に沈んでいた。
 屋久島は面白い、ちょうど北海道の北端に利尻島と礼文島があるように九州の南端に屋久島と種子島がある。それぞれ立長の島と横長の島という所も面白い。 珊瑚の砂浜、屋久鹿、屋久猿、植生から地質に生き物、気候、食べ物、そして酒と肴、見るもの全てが面白い。

 淀川登山口から入山して宮之浦岳に登り山中二泊で白谷雲水峡に抜ける縦走をした。移動日の嵐とは裏腹に山中はすばらしい好天に恵まれた。朝焼けに燃える縄文杉が「またおいで」と言ってるような気がした。そんな良い思い出を貰った屋久島の旅だった。
船首の窓より遠くの波を見ている写真 船側の窓に波しぶきがかかっている写真
水平線に目を凝らす 横の窓に波飛沫
大波に衝突した瞬間の船を丸呑みするほど大きな波しぶきの写真 船の頭から海水を被っている写真
大波に衝突した 舟の頭から冠水
ほぼ直線のようなゆるやかなカーブを走るバイクの写真 船側の窓から衛星電波を受信しているGPSのデーター表示画面の写真
まるでバイクの浮遊感 時速79kmの表示
浜に打ち上げられたチビウにの写真 砂浜に打ち上げられたチビカニと小魚の写真
金平糖サイズのうに 珊瑚の砂浜
大型犬くらいの大きさの小さな屋久鹿の写真 道路端でグルーミングをする屋久猿の群れの写真
屋久鹿 屋久猿
朝焼けの朝日を浴びて燃えるような赤に染まる縄文杉の写真
朝日に燃える縄文杉
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