110)東日本大震災 復興ボランティア活動 その9 番外編 ツグミレスキュー
餌をもらうツグミの写真
元気になったツグミ、放す直前の記念写真
2月14日の朝、何処かで不自然な鳴き声がする?付近でカラスが騒いでいる。見ると隣の家の庭に張られた鹿避けネットに小鳥が絡まって苦しんでいた。
網にかかったツグミの写真
魚を捕る魚網のようなテグスの網が張られていた
網に足が絡まっているツグミの写真
小鳥はもがき苦しんで暴れてぐるぐる巻きになっていた。慎重に外しにかかる。もう暴れないようにしっかり保持しながら、網の張力を緩めて少しずつ外していく。首を抜き、羽根を抜き、最後に右足の付け根が酷く絡まっていて脱力しており、抜くのに時間がかかった。
網から助け出されたツグミの写真
相当弱っていて右足が脱力している。しばらくこの状態で安静にして回復を待った。30分程経過しても右足は回復していないようだ。しかし単に長く留め置いても生存の可能性を奪う事になる可能性が高い。まだ朝の早い時間なので放してみることにする。
梢に止まろうとあがくツグミの写真
窓を開けて放鳥すると目前の梢に止まろうとするもうまくいかない
右足が脱力しているツグミの写真
右足が脱力していて左足一本で掴まっているのでバランスが取れず、常にばたばた羽ばたいて耐えている状態になる。
左足一本で逆さ吊りになっているツグミの写真
やがて羽ばたきが力尽きて左足一本で逆さ吊り状態になり、ついに雪の上に落下してしまった。こんな状態でネコやカラスにみつかったらやられてしまう。すぐにレスキューして屋内に連れ戻した。野鳥の保護などしたことはありませんが、腹を括って当たるしかありません。

小鳥はツグミであること、ツグミは人に慣れ難く保護は難しいこと、ツグミは雑食性であること、情報を得てダンボールで仮住まいに保護して温かな暗所に置いて、ホームセンターに食料等を調達に向かいます。

ミルワームという尺取虫のような芋虫の缶詰め餌と小鳥の雛を手乗りに育てる器具と粟玉を調達して給餌してみる。

おなかを空かせたほうが食べる気が起きるだろうと、夕方まで放置してから給餌開始。ダンボールに手を入れて捕まえると少し力が回復しているようだ。

芋虫を一匹目前に差し出しても硬く口を閉ざして無言の表情だ。そして激しく突っつき齧って攻撃してくる。ピンセットで与えると突っつき攻撃で嘴に怪我をする可能性があるので指で摘んでを与えるも指を齧られるだけだ。

作戦変更で指を齧って開いている嘴に芋虫を咥えさせてみても、一瞬のうちに振り払ってしまう。

ピンセットを使って芋虫に切れ目を作り、齧らせて中身が口の中に染み出すように細工して齧らせてみるも、やはり一瞬で振り払ってしまう。

ならばと芋虫を咥えた嘴を押さえて振り払えない状態にして待つ事しばし、落ち着いた頃手を放すと一瞬にして吐き出してしまう。

ならばならばと、押さえた手をそのままに、時折穏やかに「食べなさい」と話しかけながら根競べ、時間の経過を計るのを諦めた。重力により口の中に入っていこうとする芋虫と、そこから滲み出るエキスだけでも摂取してくれたらいいとひたすら待つ。

ついにツグミの喉が動いて飲み込む動作が確認できた。芋虫一匹食べさせる事に成功する。次は蜂蜜をぬるま湯で溶いた蜂蜜水をスポイトで飲ませてみる。

誤嚥させないように口をやや下向きにして嘴の隙間に少し含ませてみる。これは割とすんなり喉を動かして呑んだ。

スポイト二本分飲んだ所でフンをした。水分は多めに取っても排泄できるから問題ないだろうと多めに与えた。調子に乗ってもう一匹芋虫を食べさせようとするも失敗する。しかしあせる事は無い。一匹食べて一晩経てば食べ物として認識されるはずだ。
ステンレストレーにまとまられたツグミ給餌セットの写真
ツグミ給餌セット
給餌が済んでおやすみの時間。ツグミを入れたダンボールをさらに大きなダンボールに入れて二重にして、外側のダンボールを白熱電球で温める間接暖房にして保温した。夜はツグミを部屋の片隅に置いて寝た。ツグミは時折暴れてダンボールにぶつかっていた。そのたびに穏やかに呼びかけた。

翌朝の給餌は蜂蜜水を与える事から始めるとスポイト3本分くらい飲んだ。芋虫を指で摘んでクルクル回して生きているように動かしながら目前に差し出すと、獲物を捕るように瞬間的に咥えて、一呼吸して頭の方向から丸呑みにした.。芋虫は自発的に4〜5匹食べた。

ダンボールに敷いている新聞を取り替えて静かな場所に移すと直ぐにおとなしくなった。新聞紙は足の調子の悪いツグミの体が安定するようにシワが立つように周囲を折り曲げて敷いてみた。

日中あまりに静かなので生きているのか心配になり、空気穴を確かめてそっと覗いてみるもじっとしているだけだった。

夕方に再び給餌する。ダンボールに手を突っ込んで捕まえて取り出すと相変わらずキーキー言って指を齧ってくるも、芋虫を差し出すと勢い良く食べるようになった。10匹くらい食べて蜂蜜水をスポイト三本以上飲んだ。

ある程度芋虫を食べると、満腹するのか?一度咥えた芋虫を飲み込まずにやる気なさげにポロッと落とすようになる。そんなときは咥えた芋虫を指で弾いてやると口を硬く閉じて落とさないようにしっかり咥えるようになる。

そして弾くのを止めるとその隙をみて一瞬で飲み込んでしまう。獲物を逃がさない本能的な行動なのか?それを使って出来るだけ沢山の芋虫を食べさせた。

夜は昨夜の騒ぎ方が嘘のように静かにしていた。

翌朝の給餌でダンボールに手を突っ込んで捕まえると、逃げようとする力が格段にパワーアップしている。羽根を開けないように包むように柔らかく捕まえて拘束しているも、油断すると手を開かれそうな位に羽根の力がパワーアップしている。

そして両足ともしっかりと薬指の腹を掴んで爪を立てている。心配していた右足も回復しているようだ。きかない顔をしてキーキー指を齧る力も増している。

放鳥する決断をして腹いっぱい食べさせた。後は自力で生き延びてほしい。普段は絶対に触れる事の出来ない野鳥の頭を撫で撫でしながら、元気で暮らせよ〜、網には気をつけて飛ぶんだぞ〜、おなかがすいたらいつでも帰ってこいよ〜、

八時丁度に放鳥した。窓から身を乗り出して空に向かって手を開くと、ケケケケ、ケッと、言って飛び立った。力強く羽ばたいて少し離れた林の高い梢に止まって周囲を確かめている。右足は回復したようだ。一呼吸おいて遠くの森の方に飛び去っていった。

手のひらにツグミの羽毛が一片残っていた。
ツグミを保護していたダンボールと給餌セットの写真
放鳥した後の給餌セットとダンボール。給餌セットはピンセットを使って大きめの芋虫を選別して、指で摘んで与えていた。粟玉を給餌する注入器セットは蜂蜜水をスポイトで与えるのに使った。それらを安定の良いステンレストレーに並べて、いつフンをされてもいいように新聞紙を広げた上で給餌した。

ダンボールに敷いた新聞にはフンが残されている。推察すると左のが夜の給餌直後に出されたフン、真ん中に二個並んでいるのが夜寝ている間に同じ場所で動かずに出されたフン、下のが朝の給餌直前に出されたフン、どれも健康的なフンだ
新聞紙に残された健康的なツグミのフンの写真
ツグミの面倒を見ながらニジを作っていた。
出発準備の整ったニジの部品達の写真
前回一緒に活動してくれたバイク仲間がニジの部品を作って差し入れてくれたお陰でツグミの片手間作業でも数が間に合った。作成したニジの部品は分類して塩ビ管に入れて保護して運ぶ。
七色の毛糸を結んだニジの材料
ニジの部品。七色の毛糸を長さを測って切って、順番に結んで一本の部品にしてくれている。これはとても手間のかかる作業。
刺繍糸で作ったチビニジのサンプルの写真
新たなチビニジも開発中!
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