ミスターバイク誌1999年9月号掲載記事
 がんばれ難病患者日本一周激励マラソン、 なぜ? 

「男のジャーナル」 バイクは命のリアクションだ
<切実な願いと希望を持って走ります>

 その瞬間は突然やってきた。
山周りのアールのきつい左回りのブラインドコーナーでインべたにつき、出口を探すその目に映ったものは、同じインべたのラインで突っ込んでくる水色の乗用車。・・・時間が固まった「回避不能」

 真正面、ナンバープレートの位置に魚雷1号命中。
このとき3つのタイマーが作動を開始する、1つは、壊れた身体を修理して復活するまでを計るタイマー。 もう一つは、社会的に壊れた立場を修復して復帰するまでを計るタイマー。もう一つは・・・

 身体のダメージはそれ相応のレベルだった、
一年近く病院に寝泊まりし、切った貼ったを繰り返し「リハビリ」という悪い遊びにはまってスポーツクラブに通い詰め、プールの水を掻き回し続け、ようやく使える人間になってきたのは最近の話だった。

 誰しもがそうするように、失敗は、誤魔化そうとする。だが、やつのそれは強烈だった。やつの会社の力を総動員して、組織的にもみ消し工作を仕掛けてきた。

 やつは、上層部にコネをもった札付きだった、しかし、こちらには命中を免れた魚雷2号と3号とレンズの目が現場を押さえていた。口をぬぐってすずしい顔を決め込もうとしていたやつとその組織は狼狽した。 が、しかし、組織のネットワークは素晴らしかった、やつは軽くげんこつはられたくらいのダメージですんでいる。チャンスがあればこん身の※ライダーキックをお見舞いしてやりたい所だが、

※(不祥事にライダーキック!それ以外99.98%の心願と信じて)

 やつと、その一味が注入してくる汚い悪意はどんどんたまっていき、ついには溢れかえって窒息寸前になっていた、そのときに、気がつくと周りにやさしい気持ちを向けてくれている人たちの存在がありました。きれいな善意はきたない悪意よりも強く、心は中和されていき、心がいい状態になると身体もいい状態に向かいました。

 人の悪意によってダメージを受け、人の善意によってそれを回復するという心のしくみの謎が解けて、人が向けてくれる気持ちの暖かさを感じ取るために心を閉めてはいけない。たとえ雨でも、風でも、吹雪でも、アクセル全開心も全開で前進するのが目指すバイク乗りの姿、と、いうわけで、

 このたび理解されずに苦しむ弱い立場におかれている人たちを応援する気持ちを、全国に配って廻るという企画に縁あって参加させてもらうことになりました。

 「がんばれ難病患者日本一周激励マラソン」7月25日に北海道の宗谷岬を出発し、8月中に東北をジグザグに南下、9月には関東甲信越、そして中国、10月に九州、沖縄、10月末から四国、11月に関西、東海、関東、11月26日に厚生省前、そして翌日のJPC(日本患者・家族団体協議会)全国大会に参加し、最後は、札幌の北海道庁にゴールです。全走行距離は6122kmの予定です。(そうお気づきの通り既に走り出しています。この原稿も睡眠時間を削って書いています。) 

  (パンフレットより抜粋)
 現在難病対策の見直しが厚生省から提起され、その重点は「重症患者」におかれ、比較的症状の軽い患者は無視されつつあります。そして98年5月から一部の重症患者を除いて「医療費の自己負担の解消」は、大きく後退。医療費保険制度の改悪や、年金制度の不十分さになどによって、患者や家族の療養不安と経済的困難は深刻さを増しています。

 私達はこの時期だからこそ仲間として、患者や家族に、「勇気を持って飛び出せ、国の難病対策の流れを変えよう」と、全国の仲間達を訪ね、そして、47都道府県知事を訪問し、要望書を渡し、寄せ書きを貰いに走ります。

 マラソンランナーは、澤本和雄。そして私はサポート伴走ライダーとして、4ヶ月かけてアフリカツインで日本中を廻ります。見かけたらリアクションして下さい。

 3つ目のタイマーは、命そのもののカウントダウン、自分は少しけずってしまったが、みんなもそれに早く気づいて大切に使って貰いたい。

平成11年9月10日(モーターマガジン社)発行ミスターバイク誌9月号72ページ掲載

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