旅日記11月21日〜11月29まで

 抜粋なしの原文です
 11月21日静岡の休養日
いよいよ今日は東京突入の最終打ち合わせをする。都庁と、厚生省に無事たどり着くためのルートを、入念に検討する。基本的に都会の主要道路は、高架のバイパスや、歩道が突然消滅したりと、人が歩いて通れるようには作られていない。そこをたくさんのランナーが走り、それをサポートする車が走り、1,5キロごとに給水しつつ、時間ぴったりに目的の地点に突入させる。というパズルを組み立てる。

 不安材料はたくさんあれど、「やるしかない!」ミスコースは、許されない。
 11月22日静岡市から沼津市までR1号56Km静岡から沼津(R1)
R1と、旧国道を忙しく行き来するコースになる、東海道の今昔を、交互に見ながらの走行になる。奥行き数百メートルの海岸線は、通る道路によって、まったく別々の表情を見せる。東海道53つぎの人間的な風情と、R1の力ずくの物質文明のパワーが、隣同士に同居する、緊張と、安らぎが、交互にくる一日。
 11月23日沼津市から箱根市までR1号45Km
箱根峠は、3連休の最終日で大混雑、道路は大駐車場状態になる、ランナーに車がまったく追いつかない。無線で車と連絡をとりながら、バイクだけは絶対に、伴走をはずすわけにはいかないので、ランナーを追うも、かなり厳しい。見失いそうになりながら必死で追う。ここが、バイクの機動性の発揮場所!気合を入れて事にあたる。
 11月24日箱根市から藤沢市までR1号で、43Km
朝から強い雨の洗礼を受けながらのスタートになる。冬の冷たい雨は、風と共に容赦ない、みんな寒さに黙って耐える。バイクは後ろから大型トラックが、追い抜きざまに叩きつける泥水を全身に浴びることになる、神経と身体の消耗が、激しい一日になる。
 11月25日藤沢市から横浜市までR1号で、35Km
国道脇に見慣れた野菜の無人販売所がある、小さな商店街も健在だ、などとのんびりムードの一面と、一変してランドマークタワーのような巨大なコンクリートの造形がどんと現れる。この町の素顔は、?

 横浜といえば中華街、なんだけど素通りする悲しさか、せめてにおいだけでもしないかと、鼻をひくつかせるも、この辺は、ガソリンと軽油の排気ガス風味が、充満しているだけ。
 11月26日横浜市から東京都までR1で、28Km
ついに最終章。複雑に入り組んだ非人間的な道路と、尋常ではないその込み具合が、経済大国日本の中心部にやってきたことを物語る。コンクリートジャングルを、かき分けて、聳え立つ厚生省にたどり着く。

 その時、そこは、人、人、人、人で溢れ返った、通行不能の占拠状態。しかし、それは、さっきまで掻き分けてきたのプラスチックのように無表情な人間の群れでは無い。ひまわり畑の真中にいるような笑顔の洪水の中にいる。「おめでとう。」「ありがとう。」

 みんなで小さな力を出し合って大きなひとつの成果を達成する。その喜びを分かち合う、かがやく笑顔の花畑。ほんと、みんないい顔してる。
 11月27日東京都から大洗フェリー乗り場まで(常磐道)
日本患者家族協議会、全国集会で旅の報告をしてから、霞ヶ関から、一路フェリー乗り場へ高速を飛ばす。途中本体と離れて、ホンダの本社に行ったり、皇居の周りをうろうろしたり。ホンダレディはかわいいし、皇居の御堀の白鳥もかわいいし、それぞれ写真を撮りつつ、東京もなかなかいいとこだね〜などと一瞬なごんでから、首都高へ上がる、「なんじゃこりゃ!」

 首都高じゃなくて首都低じゃないのか?、バイク便の兄ちゃんと、すり抜けバトルを楽しんでたら、ふと気づくとぜんぜん違うところに向かってる!暗くなるころに、フェリー乗り場に到着する、やけに寒いと思ったら、このとき北海道上空にはマイナス35度の真冬並みの寒気団がやってきていた。

 近くの温泉保養施設の駐車場で、スパイクタイヤに交換する。こいつは4年前に作った、ダブルフランジカップピンを前後で、5ミリ出しの540本打ち込んだフルピン仕様の凶悪タイヤ、ひらたく言えば、アフリカツイン用厳冬期仕様タイヤ、となる。その実力は、凍った湖でやったアイスレースで実証済み、

 かかってきなさい、寒気団!
 11月28日太平洋上フェリーでの休養日
大洗から乗ったフェリーは、がらがら状態、ゆっくりと寛いだ船旅のはずが、折からの低気圧のおかげで、大型船も結構な揺れっぷりを見せる。

 船酔いになって、具あい悪いことしきり。吐き気がおとなしいうちに一気に食事を詰め込んで即、ベッドに横たわるというような食っちゃ寝の生活をすることになる。

 途中何度か、パソコンに向かうも、胃袋からこみ上げるものに阻まれて、すぐにベッドに逆戻り。外に出て風に当たろうにも、雨や雪が激しく、船酔いが引くまえに、風邪をひいてしまう。特に南国仕様になっているこの身体にはビシッと堪える寒さだね。

 ちなみにフェリーに乗ってるバイクは一台だけだ。

 夜の8時過ぎに苫小牧港に接岸する。「は〜るばるきたぜっ、は〜こだて〜」by北島三郎、の気持ちで4ヶ月ぶりに北海道上陸、カッキーンと冷えた空気が、たるんだ身体を引き締める
 11月29日苫小牧市から札幌市までR36号65Km
朝4時半起きの5時スタート、外は真っ暗、気温マイナス7,3度、凍結、のち圧雪、所により積雪、といった具合の路面コンディション。こんなに寒さが身にしみたのははじめての経験じゃなかろうか?

 鼻水が、そのまま氷柱になるんでないかってなぐらい超〜ざむい。風が肌に突き刺さる、おまけに用意しておいたはずの冬用のグローブが、荷物にまぎれてどこか旅に行ってしまって出てこない。仕方なく夏用の皮グローブで、走り出すも指先がかじかんでクラッチが言うことを聞かない。寒さのため、ランナーのペースも速い、雪を踏みしめて走っても走っても身体が暖まらないんだ、太陽よ、早く顔を出してみんなを暖めてくれ!

 暗闇を全てオレンジ色に染めて、美々川の湿原から日が昇る。群青色の暗闇と、雪原一面の純白と、それらを染める黄金の光、

 美しいとは、こういうことを表す言葉。

 まぶしい光を全身に浴びて、みんなそれをしばし無言で見つめる。この瞬間に俺は勝ったも同然と、密かに喜んだ。なにせ、太陽が見方についたんだ、ゴールは見えた。
 それにしても大型トラックの通行量が、尋常でないと思ったら、鉄道がトンネル崩落事故で、不通になった代替輸送のトラックだった。てかてかのアイスバーンをつるつると左右に振れながら走ってくる、緊急事態で急ぐのはわかるんだけど、事故を起こしたら元も子も無いんだからもっと慎重に走ってくれ〜「おっかないよ〜」
                       ・・・・・てなわけで、とっぷりと日も暮れたころ、

 北海道庁赤レンガ前にめでたくゴール、嵐の宗谷岬を7月にスタートして災害レベルの連日の雨にたたかれて、とんでもない猛暑に連日焼かれて電柱もぶっ倒す風台風にも当たり、きつーい山坂なんのその渋滞、混雑、かいくぐり、雪の北海道にたった今、帰ってきました。

 雪と寒さの中、盛大なセレモニーがとりおこなわれる、「予定通り全都道府県庁を巡り、厚生大臣にも面会をし、日本を一周して無事に帰ってきました。」

 足速なセレモニーが終わり、みんなが去ったその後に、雪の中にバイクが一台こっちを向いてたっている。アフリカツインというよりもアラスカツインて感じだね。

    「ありがとう、相棒、」
 この国は善意に溢れている。日本万歳!

(旅を終えての感想)

 旅を終えてみて、思うことは、「人っていいな〜」この言葉に集約されます。新聞やニュースを見ているかぎりでは、世の中いったいどーなってんだ?おかしなことになってきてきちまってるな〜と、感じることが多いんですが、

 はっきり書きますが、自分の場合は、この企画に参加する大本のきっかけとなった、警察官の車との正面衝突事故に遭った瞬間から、普通見る事の無い社会の暗部にどっぷりと首まで漬かる事になってしまいました、

 みなさん御存知のように、神奈川県警だけが特別なわけではなく、何処の組織でも不祥事は、誤魔化そうとするものなんです。

 人間がすることですから、ミスや、間違いは、あって当然なんですが、それを修復するシステムが、「変」なんですね。自分もそうなったように、恐らく全国にそういった悪意と戦っている人達がいるのではないかと思います。

 捨てる神あれば拾う神ありじゃないんですが、悪意を注入してくる人がいれば、善意を向けてくれる人も必ずいます。自分がそうして復活してきた経験をもとにして話をすると、悪意によって心が荒み、善意によって回復する。そして心と身体は連動しているという事です。

 今回、日本全国総ての都道府県をくまなく走り回って、見てきた上で断言しますが、この国には、純粋な善意が、溢れています。

 問題はそれを感じ取れるかどうかなんです。ヒントは、三つ、「心を開けておくこと」「悪くとらないこと」「人に善意を振り向けること」
 バイク的に言うなら、「くよくよしないで、アクセル満開で行け!」「そして困ってるやつに気づいたら手を差し伸べろ!」てことかな、特に後者は、即効性ありだ、


 今回は難病と戦う人たちをメインに応援してきたわけなんだけど、みんな難病ってわかる?無関心はいかんよ、自分にもいつ降りかかるかわかんないんだよ。

 いんちき評論家が言うようにこの国はおかしな方向に行ってしまうのか?やさしい気持ちのキャッチボールを、日本中で見てきたことを元にもの言えば、この国は安泰だね。悪いシステムは小さな善の大集合で駆逐される。常習的に不祥事を起こしている彼にも尻に火がつく時がくるでしょう。わかってるのかな?不庄司くん?おっと変換間違えたかな?

 よくこの時期に温泉露天風呂なんかで、燗酒を盆に浮かべて雪見酒、なんて場面で、よく言う言葉があるでしょう?しみじみと、「日本人に生まれてよかった。」ってやつ。今回旅を終えての感想を聞きたいですか?へっへっへ、それですよ、まさにそれそのもの!この国に住む人々の心はすばらしく温かい、ありがとうございました。

ニッポン万歳!

 ふところを暖かくするための仕事と、心を暖かくするための仕事、どっちも大切な仕事なんだな〜、いまごろそれに気づいた 佐藤 真吾
 

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