次へ
6-2)金沢市
 街角に十姉妹のかごが出されていました。見た目も泣き声も美しいとは言い難い小鳥達ですが、その仲良く暮らす姿はほほえましいものがあります。
 
おまけの話・・・子供の頃、家で飼っていた小鳥の話です。

 子供の頃、この位の大きさの鳥かごに十姉妹4羽とカナリア1羽を一緒に飼っていた事がありました。
それは知人から貰いうけた時点からカナリアと十姉妹は一緒に飼われていました。
全身真っ赤で、泣き声も容姿も美しいカナリアは毎日歌を歌って暮らし、
十姉妹達は、むつまじく4羽仲良く暮らしていました。

 雄のカナリアは気性の激しいところがあり、
たまに近寄り過ぎた十姉妹を攻撃する事がありました。
カナリアと十姉妹達は、常に一定の距離を置き、一緒に餌をついばんだり、
一緒に水を飲むことはありませんでした。

 ある気持ち良く晴れた秋の朝、ベランダに鳥かごを出して日光浴させました。
器の水を変えてやると、鳥達は次々に水浴びし、秋の日差しを一杯に受けて
気持ち良いと言葉に出して飛びまわっています。
かごの外から内側に新鮮なキャベツを差込んで洗濯バサミで止めると、
バリバリかじりついて食べ始めます。カナリアは声高らかに歌を歌いはじめました。

 あんまり天気がいいのでそのままにして、子供は外に遊びに行きました。
あんまり天気が良いので、遠くの友達の家に自転車に乗って出かけました。
一通り外で遊びまわって、友達の家で飼われているハムスターで遊んでいました。
いつの間にか時間は流れ、夕方近くになっており、気付くと外は雨が降っていました。

 たいへんだ、もう帰んないと・・・自転車をこぐ小さな背中に冷たい雫が落ちてきます。
いつしか雨は本降りになり、強い風も吹き出して、嵐の様相を呈してきました。
転校したばかりの子供は、以前の学校の友達に会うために片道1時間以上の道のりを
自転車漕いで行ったものでした。

 向かい風の嵐の中、自転車は思うに前に進みません。
外に出してきた鳥かごの鳥達が死んでしまうのではないかと思い、
向かい風にふらつきながらも懸命にペダルを漕ぎます。
秋の日暮れと厚い雲に覆われて辺りがどんどん暗くなっていきます。
身体に染み込んだ雨が、ズボンのすそからしたたり落ちる程になった頃、
ようやく家に帰り着きました。

 自転車を放り投げて一目散に階段駆け上がって、
開けっぱなしの窓から目に入った鳥かごには・・・鳥達の姿はありませんでした。
周りはキャベツが吹き飛ばされて散らばっています。
とりあえず鳥かごを部屋に入れ、良く見ると、
十姉妹の壷巣(わらで出来たつぼ状の巣)の中でカナリアも一緒に身を寄せ合っていました。

 死んでなくて良かったと、へたへたと座り込み雨が吹き込んで濡れたじゅうたんの上で
濡れた服を脱ぎ始めました。

 いつもケンカしていて決して寄り添う事の無いはずのカナリアと十姉妹でしたが、
嵐という状況下では、寄り添ってお互いに身を守るという術を持っているという事実に
子供ながら感動した事を覚えています。

 下の写真の、十姉妹を飼う基本的な鳥かごの図、「ツボ巣」と「ブランコ」と「陶器の水浴び」は、
いまも健在のようです。仲良く暮らす十姉妹って今で言う「癒し系」ではないでしょうか?
「道端の風景」の表題に戻る
次の写真に進む
下の写真をクリックしても表題に戻ります