64)蝦夷羆の話(その三)
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ジュースの味 
 まんがに出て来る「クマのプーさん」はハチミツが大好きです。本物の羆も甘いものが大好きです。
横っ腹に指が入りそうな穴が開いたビールとジュースの缶の写真
3-1)
変な所に穴が開いています。・・・どうして? 
羆の剥製がジュースの缶を齧っている写真
3-2)
それは、羆が齧って穴を開けたものです。 
ジュースの缶に開いた穴と羆の牙が見事に一致している事を示している写真
3-3)
 このように器用に牙を刺して穴を開けたたようです。でも、どうして中に甘いジュースが入っている事が判ったのでしょうか? 缶ジュースは、リングプルを開けるまで缶を舐めた所で全く味も匂いもしません。もちろん羆はジュースの文字も読めませんしリングプルも開けられません。

 おそらく誰かが飲み終わったジュースの空き缶を羆の生活圏内に捨ててしまったのではないかと推測されます。ジュースの空き缶を見つけてしまった羆は缶の中に僅かに残ったジュースを舐めてしまい、人間の持っている甘いジュースの味を覚えてしまったのです。
冷蔵庫がひっくり返されてめちゃめちゃに荒らされている猟師小屋の室内の写真
3-4)
 甘い缶ジュースの味が忘れられない羆は人間の生活圏に接近するようになります。そして無人の漁業の猟師小屋に進入し、箱で買って保管されていた缶ジュースを見つけて全部飲んでしまいました。 

 無人の猟師小屋に入れば美味しいジュースが沢山ある事を覚えてしまった羆の行動は一気にエスカレートしていきます。
何軒もの猟師小屋を破り、冷蔵庫を倒し破壊の限りを尽くすようになりました。

 こうなるといつ人が襲われるかわかりません。人々は協力して事態の収拾を図ろうとしましたが、頭のいい羆は警戒の裏を突くように、猟師小屋荒らしは続きました。いつどこに出没するかわからない羆を防ぐ手立てはありません。そこで罠をかけて羆を捕まえる事にしました。餌は蓋を開けていない缶ジュースです。目的の羆だけを捕らえる為の知恵でした。
羆に飲まれて畳の上に転がっているおびただしい数の缶ジュースの写真
3-5)
 しかし何日たっても羆は罠に掛かりません。そうしているうちにさらに猟師小屋が襲われていきます。 そこで使われていない猟師小屋の中に箱罠を仕掛けてみる事にしました。しかし羆は罠の猟師小屋には入りません。無人の小屋とそうでない小屋を羆はちゃんと見分けていたのです。

 そこで罠を仕掛けた猟師小屋を外側から板を釘で打って目張りをして完全な越冬状態にして様子をみました、すると見事羆は目張りを破って侵入し、罠に掛かったものでした。 たった一本のジュースの空き缶から、とんでもない騒動になってしまいました。
信号待ち中の自走式キャンピングカーの後部デッキの自転車キャリアの端に無造作にぶら下げられた今にも落ちそうな生ゴミの詰められたコンビニ袋の写真
3-6)
 羅臼町内でキャンピングカーの後ろに生ゴミが入ったビニール袋が無造作にぶら下げられていました。夏の暑い時期に調理時に出た生ゴミを車内に保管する事は臭いかもしれませんが、生ゴミは雑食の羆にとって魅力的なごちそうです。

 この土地に暮らす人達は人間の出す生ゴミの味を知ってしまった羆はどのような行動に出てくるのか?その怖さを知っています。生ゴミは慎重に扱う必要があるのです。

 ここでのゴミの問題は、通常の範疇を超える問題を含んでいます。
 
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