65)蝦夷羆の話(その四)
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浜中羆事件 
 知床のキャンプ場が羆出没で閉鎖になった同じ頃、北海道の道東の浜中町で事件が発生しました。
手の平に載せられたゴロンとしたドーナツ状の金属の塊の写真
4-1)
これは何でしょう?
 これはスラグ弾という猟銃の弾です。羆や蝦夷鹿等の大型の獣を狩猟する時に使う威力の多きい弾丸です。 何か硬いものに当たって貫通出来ずに潰れてしまった弾丸です。
大きさの比較の為にフキの葉の上に乗せられたの使用前の猟銃の弾と使用後の潰れた弾丸と五百円玉の写真
4-2)
 それは牧場に羆が出たという事で数名で駆除に向かった所からはじまります。ほどなくハンターが羆を発見、見事仕留ました。しかし仕留めた獲物が大きかったので、運ぶ為に農家にトラクターを借りに行き現場に戻りました。

 たしかこの辺だったはず・・・と探していたら突然羆に襲われてしまいました。弾は急所を外れ羆は生きていたのです。その場でハンター一人が食い殺されてしまいました。逃げ帰ったハンターから状況が伝わり、討伐隊が現場に向かいました。
美しい川岸に設えられた薫別温泉の写真
4-3)
 討伐隊として手を上げたのは二名の道外ハンターでした。慎重に歩みを進めるうちに沢地の小川に差し掛かった所で、一人のハンターが「いたぞ!」と声を上げました。

 羆は声を上げたハンターに向けて十数メートルの距離をピョンピョンと猫が走るように数歩で一気に飛び掛り小川の上に押し倒すように襲い掛かりました。もう一人のハンターは襲われている人に銃弾が当たらないように地面すれすれに至近距離から羆の心臓めがけてスラグ弾を数発発射しましたが利きません!

 そこで襲われている人が片腕をがっちり噛まれた状態で足で羆の首を蹴り上げるようにして自分の身体から頭を離した所で、横からライフル銃で羆の頭を打ち抜いてようやく仕留めました。襲われた人は命は無事だったものの腕を食い千切られる重症を負ってしいました。

 至近距離から心臓目掛けて発射されたスラグ弾はあばら骨で弾かれて潰れてしまっていたのです。その後取り出された潰れた銃弾の写真がそれなのです。この事件で死者一名、重症一名の大きな人身事故になってしまいました。

 これは事件の翌週にたまたま山間の温泉に行った時に羆を仕留めた本人と出会い話を伺う事が出来ました。(赤い繋ぎの方です)この段階では私はのんきに川で泳いで遊んでいます。
 
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