12)個人装備について
1)伴走ライダーから見た個人装備について
 1)伴走バイクが、サポートしていく上で必要な個人装備についてです。ランナーが、「走る」と言えば、たとえどんな条件であってもきっちりサポートさせてもらいます。 という基本コンセプトのもと、考えうる様々な悪条件を乗りきるための装備をしていました。

 まずは、暑さ対策の装備ですが、「なぜ暑いのか?」とういう基本的なところから・・・。

 そもそもオートバイというものはエンジンが剥き出しで、熱放出のいい構造になっています。本来は走行風によって冷却されるようになっていますが、今回の伴走では時速8Kmといった極低速走行運転を朝から日没まで行ないますので、バイクの設計段階での熱放出の計算は当てはまりませんん。

 エンジンが発した燃焼熱は、外気に放出されること無く、熱伝導によってバイク全体に伝わっていき、真上に上がって、まともに搭乗者を加熱します。
 
 エンジンは100度を越える温度になって、バイクの温度ゲージが、常に危険領域に入って放熱のためのラジエターに風を送る電動ファンは作動しっぱなしの状態になります。

 その熱せられた風は、燃料タンクの下を通って、タンクのガソリンをポコポコ沸騰させつつ太ももの内側を直接加熱し、立ち上る熱気は体全体を加熱します。ハンドルに取り付けた温度計は、50度代を示していました。

 加えて太陽の直射が有り、アスファルト路面の照り返しが有り、道路に溢れる車の廃熱風を浴びび続けます。

 ヘルメットを被った頭の中身は、ゆで卵が出来るのでは?と思われるほど加熱していました。
灼熱対策
 2)バイクの発する熱と、太陽の直射と、他車の廃熱、それらを防ぐためのウエァーを考えました。

 それと重要な事が一つ、バイクは体を剥き出しにして乗る構造上、ウェアーには衝突や摩擦に対する身体の安全対策という重要な側面をもっています。したがって、短パンにサンダルなどといった格好は出来ません。

 バイクを操る自分の安全を確保しつつ、熱射病対策を考えた服装についてです。
これについては、暑さのレベルを5段階に区分して対策をたてていました。
基本装備は、マラソンTシャツにジーンズという格好です。
第二段階は、マラソンTシャツにホワイトジーンズという格好です。
第三段階は、ステンレスメッシュのプルオーバーにホワイトジーンズという格好です。
第四段階は、ステンレスメッシュのプルオーバーに、
白系カラーの薄手のポリエステルのチノパンツという格好です。
 
 第五段階は、第四段階格好に、放熱性の良いブーツを履いて、給水時に水を掛けて冷却します。
 ジーンズは3本、ホワイトジーンズは二本、チノパンツは三本用意していました。マラソンTシャツは5〜6枚、ステンレスメッシュのプルオーバーは一着のみの装備です。
 
 ステンレスメッシュのプルオーバー・・・金属のステンレスを真空蒸着させた特殊な繊維を使ったメッシュ状のウエァーを装備していました、
 
 もともとはシーカヤックという海で漕ぐカヌー用に作られた製品で、太陽の直射を最大限防ぎつつ、裸に近い通気性を確保するプルオーバータイプのウェアーです。
 
 プルオーバー・・・首元のチャックが途中までしかなく頭からすっぽり被るタイプのウェアー
 
 太陽の直射から受ける熱を軽減させるためには白い服装は有効でしたが、一日中道路っ端を排気ガスと埃をたっぷり浴びつつ進んでいますので、すぐに遠目にもわかるくらい汚れていきます。

 県知事の応接室に通されて取材を受ける訳ですから、ソファーに座る事がはばかられるような、汚い格好では支障がありました。
  
 ステンレスメッシュのプルオーバーは、ポリエステルと金属で出来ていますので、全く吸水しません。水道のあるところでパッと洗って絞ればすぐに着られます。

 それにひきかえジーンズは、洗濯機で洗ってから、乾燥機に長いこと掛けないと乾きませんが、安全性の点で、ほかに代わるものがありませんでした。
 
 実際には第三段階の格好までで、耐えていました。あと一段階対策が打てるという事が、心理的余裕を生み、猛暑の中でも冷静な判断ができていました。

 絶え間なく全身から噴出す汗を衣服が吸い、ジーンズは洗濯機から取り出したままのような状態で常に絞れるほどぬれていました。後ろポケットに入れた千円札は汗で濡れていて取り出そうと引っ張るとちぎれてしまいます。
 
 寒さ対策としては、防水透湿素材ゴアテックスレイヤー使用で、ハードプロテクション装備のイタリア製バイク用ウェアーを使っていました。
 
 雨対策には同じくゴアテックス使用のレインウェアーと防水グローブ、と、予備として登山用の防水ウェアーの上下を一組装備していました。それと常用する軽い雨風を防ぐためのバイク用ジャケットを一着と、マスコミに映る時用のマラソンオフィシャルジャケットを数枚装備していました。
 
 季節が移るにつれて、冬用のアンダーウェアーの上下や、フリースの上下と冬用グローブ、ブーツに取り付けるアイゼン(凍結路面用すべり止めの金属製の爪)を装備していました。
 
 雨対策は重要でした。秋になり、冷たい雨が降り続く時期になって、連日ずぶぬれ状態が続く中で、それを乾燥させる術が無い宿に当たった場合、予備のウェアーを装備していることが重要でした。それでも切羽詰ると、夜通しへァードライヤーを当てて乾かしていた事もありました。
 
 暑い時期の雨は冷却効果があって、多少は濡れていた方が過ごしやすかったりしますが、秋も深まった頃の冷たい雨にずぶぬれになってしまうと、厳しいものがありました。連日の酷使にくたびれたレインウェアーに、防水性は期待出来ません。
 
 夏の頃は恨めしかったエンジンの熱が、冷えた身体を温めてくれていますが、暗くなった頃マラソン終了地点に到着し、足早に車で宿への移動が始まると、ずぶぬれの身体に容赦無く冷たい風が吹き付けます。あっという間にカタカタと震えが止まらなくなってしまいます。
 
 冷風効果(ウインドチル)といいます、濡れて風に吹かれると、気化熱の効果も手伝って、予測を上回る勢いで身体を冷やしてくれます。それについての対策が不十分であったとの反省点を残しました。
 北海道再上陸の時には既に冬景色になっていましたので、冬用のウェアーを着込み寒さに耐えました。ハンドルの温度計でプラス50度から、マイナス10度までの温度域を耐えた事になりますが、ウェアーの重要性が身に沁みた経験でした。
 
 他にも沢山ありますが、的を絞ってもう二つだけ重要だった装備品を紹介します。それは、日中の疲労と緊張を解きほぐすための装備でした。
 
 酒・・・旅に出る前に、いつもの気に入っているバーボンウイスキーを一本バッグに忍ばせておいたのですが、結局、口を切る事が無いまま日本一周連れて帰ってきました。

 本当に疲れ果ててしまった時に、何を欲しがったのかというと、焼酎でした。それも純米焼酎を、宿の部屋に備え付け湯のみに注ぎ、ポットの湯で割った薄いお湯割が疲れた身体に一番なじみました。
 
 他にも各地でいただいた日本酒がたくさん口に入ったのですが、最後は「白岳しろ」のぬるいお湯割に行き着きました。・・・というわけで、「白岳しろ」が重要な個人装備でした。

 もう一つは音楽でした。長旅なので一応MDプレーヤーをもっていったのですが、恐らく聞いている暇など無いだろうとの思いとは裏腹に、
 
 実は重要な装備でした。疲れ果てているときほど、音楽を聴かなければならないという事がわかりました。
 
 宿のテレビなどをつけていたのでは身体が休まらなんです。無音でも駄目なんですね、あっという間に睡魔に飲まれてしまいます。旅の途中でその重要性に気付いて、繋げるスピーカーを買いに走りました。
 
 携行したMDタイトルも少なすぎました。・・・というわけで、MDプレーヤーと多目のタイトル、そこそこの良い耳したスピーカーが重要装備でした。
深夜に及ぶパソコン作業支えたのは、焼酎とMDでした。
=== 12)個人装備について ===
13)サポート車両について
11)サポート隊装備について
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