13)サポート車両について
1)マラソン号について
 使用する車両は、北海道難病連所有のワゴン車ハイエースです。 これは3ナンバーの乗用ワゴンで、3列シート8人乗りのタイプです。
 
 このベース車両を改造してマラソン本隊の母船「マラソン号」に作り上げていきます。まずは3列目シートをはずして沢山の荷物を積載出来るようにして、
 
 屋根に取り付けられている純正のカーゴベースに目立たないように、街宣用のスピーカー二基を取り付け、マラソンアピールの看板を四方の面にとりつけています。その上にルーフキャリアを取り付け、大型のルーフボックスを2つ装備しました。
 
 当初、いろいろな案がありました。ダイハツの「ミゼット2」という車を二台連ねて伴走しようか?などという奇抜な案もありましたが、ワゴン車とバイクという組み合わせで伴走するという方法がベストとの結論でした。
 
 人員的制約から、マラソン号一台だけでサポートしていくという案もありましたが、それには物理的な無理がありました。 他人の迷惑顧みず、渋滞巻き起こしながら、ランナーに付いて路肩を伴走するのであれば、可能であると思いますが、そんなことは出来ません。
 
 荷物的に間に合うのであれば、軽のワンボックスなどが、こういう企画には向いていると思いますが、今回はハイエースワゴンという選択は正解だったように思います。
 
 小型の車両を選んだところで、4輪車では二輪のバイクの機動性には比べるべくもありませんから、無理をせずに、大きな母船としての役割をになった今回の使い方は安全面からも良かったと思います。
 
 看板をしっかり掲げた大きな専用車両と、専用に看板を掲げた大型のバイクでしっかりサポートしているということが、企画そのものの信用性を後押しする効果があったと思われる場面が多々ありました。
 
 全くの知らない方から、「何かのテレビの企画ものなのか?」との質問をよくうけました。 社会に広くアピールしようとしたこの企画にとって、実は見た目というのは重要な部分でした。
 
 ルーフに積んだ二つのルーフボックスのお陰で、渋滞に巻き込まれたり、信号待ちで並んでいるときなどでも、他の車よりボックスの分頭一つ上に出ている事で、現在地点の把握におおいに役立っていました。地元の道案内の方や沿道に出て応援してくださる方々にも、わかりやすかったとの感想を多々いただいていました。
 
 側面に描かれた日本地図は、アピール効果と、今何をしているのか?といった事を全く知らない一般の人に説明するのに大いに役立っていました。
 
 また、山間部などで、路肩に止められずに、取り付け道路などに頭を突っ込んで給水するような場面では4輪駆動であることが重要でした、ぬかるんだ悪路の斜面を上がるときに4駆でも滑ってしまう状況が発生していました。
 
 後日談ですが、サポートカーについても企業に協賛のお願いをしておけば良かったな〜などと話がでてました。・・・(笑)
 
 
2)伴走バイクについて

 使用したバイクは「アフリカツイン」という名前の砂漠の横断レースに使われる競技車両の市販車でした。・・・(詳しくは表紙の「アフリカツイン」に記述)
 
 伴走バイクの選択は、苦渋の選択でした。バイク本来の使い方から大きく外れた、特殊で過酷な使用条件からして、アフリカツイン以外に無いという結論は、早い時期から出ていたんですが、
 
 ディレクターとして一緒に旅をする、難病患者でもある事務局長は、50歳にして免許をとった遅咲きのバイク乗り。条件のいいところではランナーと一緒に花を持たせてあげたいとの思いがありました。
 
しかし中型に限定されると該当車種がありません。かろうじてカワサキのKLX250というオフロードバイクが候補に上がったものの雨風強い中で、時速一桁台で伴走する中、すれすれを抜いていく大型車の巻き起こす風を受けながら走るという場面で、安全を確保出来ません。
 
 他にも燃料タンク容量や、極低速で安定した走行が可能か?などの問題大有りでした。 またオンロード系は、雨の日の縁石を斜めに乗り降りする状況などで無用な危険を伴います。
 
 白バイで普通のマラソンの先導が勤まるのは、他の交通を遮断している道を、時速20Km付近で、一定して走れるからではないでしょうか? きっとそこには計り知れない苦労があるとは思いますが、そして白バイが着くようなマラソンや駅伝は涼しい時期に行われる事が多いという事もあります。
 
リハーサル走行
 最初のリハーサルで使用した私のバイクはホンダの「V45マグナ」というVFR750のエンジンを積んだバイクでした。つまり白バイと同じエンジンです。
 
 結果として、アイドリング付近の安定したトルクのお陰でとても扱いやすく、低速での伴走は申し分ありませんでした、が、しかし、摂氏4〜5度といった冷蔵庫の中のような北海道の5月の気温の中でラジエーターの温度は常にレッドゾーンで電動ファンは回りっぱなしの状態でした。
 
 今度は二階目のリハーサルで、大型スクーターを使ってみた所、二日目にしてエンジンが溶けて壊れてしまいました。外気温プラス4度℃の出来事でした。・・・(薄々そんな予測はたっていたのですが・・・)
 
 
 また、実際のマラソン中、熱対策の最終的手段としては、加圧式の水鉄砲を装備して、給水の度にラジエタ−とオイルクーラーに給水して冷却していました。・・・(人間もろともです)
 
 実際日本一周伴走してみての感想は、予測どおり過酷なものでしたが、優秀なバイクのお陰で乗りきる事ができました。バイクの選択はアフリカツイン以外にありませんでしたが、改造の時点で、大型のナックルガード(手の保護カバー)を採用するべきであったとの反省点をのこしました。
 
 また、自分が所有している旧型のアフリカツインでは、問題無く通過できるはずの段差で腹を擦るなどの、??な部分が多少あった事を除けば、伴走最適車両でした。
 
 伴走バイクにはドイツ製のリアトップケースを取り付け(大きな箱状のプラスチックの入れ物)中にクーラーボックスを入れて、ランナーに給水・給食していました。
 
 トップケースには目立つ看板を付けてあり、後続車の追突を防いでいました。バイク自体が大きいので看板の位置も高く、子供の背丈を越える位置になり、乗用車の頭越しに見える状態になっていたのは良かったと思います。
 
 
 一般道路を時速8Kmで伴走するという事は、前方に注意するより後方に注意を払う時間の方が圧倒的に多く、すれすれを抜いていく車にハンドルを引っ掛けられる恐怖との戦いの日々です。
 
 特にリハーサルの時の教訓で、雨天時には後方からの泥しぶき攻撃で、すぐにバックミラーが効かなくなるので、非常に危険であるとの経験から、電動撥水ミラーを自作して装備していたために、無用な危険は最大限回避できたと思います。
 
 路肩に違法駐車している車両をかわす時も、後方視界のクリアーさは重要でした。 また、そのときの瞬間の加速力も相当の力が要求されます。
 
 実際に後続車両に引っ掛けられることを回避できない状態になった事がありました。
後ろから追突されてハンドルを引っ掛けられると、身体は車の方に倒れ込み車輪に轢かれてしまいますが、
 
 ガードレールにぶつかってでも被害を最小にとどめる事が出来たのは、そのための改造を施したこのバイクであったからだと思います。ひざのカーボン装具は砕け、バイクの左半分は力一杯ガードレールに擦りつけられましたが、車との接触はかする程度でかわす事ができました。
 
 お陰様でこうしていまここにいるわけです。実際の伴走は奇麗ごとではありませんでした。 人は必ずミスをおかすものですから、後続車両からランナーの後ろを守るというのが重大な役目でした。 そのために大型バイクに大きな伴走中の看板を掲げて目立つようにして走っていました。

 この企画が終わってほどなくして、伴走してくださった方の一人が、ある公道を走るマラソン大会に参加中に、後続車に轢かれて死亡するという、いたましい事故が起きてしまいました。
 
 起こり得ることだとは思っていましたが実際に死者が出てしまうとはとても残念です。心よりご冥福をお祈りいたします。
 
今回の伴走バイク、アフリカツインはホンダさんより協賛いただきました
=== 13)サポート車両について ===
14)リハーサル其の一
12)個人装備について
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