62)蝦夷羆の話(その一)
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臆病な蝦夷羆(えぞひぐま) 
 北海道と本州の違いは羆が住んでいるか否かという事に集約されるような気がします。羆はアイヌ語で「キムンカムイ」山の神と呼ばれています。人間を含めて陸の生態系の最高位の存在です。
森に消え行く羆の後ろ姿の写真
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 仕事がら山に入る機会は多いのですが山で羆に出会う事はまずありません。見た目によらず羆は臆病な動物です。基本的に人間を恐れています。そのため山の中では羆の方が先に人間の気配を察知して出会わないように避けてくれるのです。

 もし不運にして出くわしてもほとんどが羆の方から逃げていってくれます。山に入る時のルールとして、人間の存在を知らせるための音を出しながら入るのですが、何もせずに入ったとしても相手は野生の羆です、臭覚も聴覚も人間の比ではありません。よほどの事が無い限り先に気が付かれてしまいます。
開拓史の時代の北海道地図の写真
1-2)
 かつて北海道が蝦夷(えぞ)と呼ばれていた頃は、現在と比較にならない程の羆が生息していました。 その大自然の中で先住民族であるアイヌの人達が暮らしていました。狩猟民族であるアイヌの人達は、天空の神々がそれぞれ動物に姿を変えてアイヌに恵みを与えてくれているという考え方をしていたようです。

 羆はアイヌに肉を与えてくれる神様の化身という位置付けです。アイヌに恵みをもたらした良い羆は手厚く歓迎され儀式によって神の国に帰るのです。逆にアイヌに危害を加えた悪い羆は儀式をしてもらえずに神の国に帰る事が出来ないのです。
クロスボウのようなアイヌの仕掛け弓の写真
1-3)
 アイヌの人達はこのような仕掛け弓矢を使って羆を狩猟していたようです。羆の通り道に弓を仕掛け羆が紐を引っ掛けると、真横から心臓の位置目掛けて矢が飛ぶように仕掛けられています。鏃(やじり)にはトリカブトより抽出された猛毒が塗られています。矢が刺さると毒によって心臓が止まってしまいます。

 アイヌコタン(人の村との意味)に近よる羆はアイヌに獲られて食べられてしまうのです。そうして羆はアイヌ(人という意味)を恐れるようになり、人の生活圏に近寄らないようになります。
アイヌの仕掛け弓の作動を理解する為の実働模型の写真
1-4)
 実際はこんな感じで弓を仕掛けていたそうです。これは良く出来たディスプレーで、実際に作動させて、矢を放ち仕組みを理解する事ができます。

 そうして太古より人に近寄る羆は獲られ、人と距離を置く羆が子孫を残すという人為淘汰が何百年何千年と続く事により、結果として羆は人を恐れ避けるようになったものと推測します。
 
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