83)元旦宗谷岬ツーリング2010(その三)_56)テントのおまけ_
(その五)構造的な特徴・・・081〜100
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その一/その二/その三/その四/その五/その六
テントの基本構造の違による特徴を考えます
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81)
 本体の構造が判りやすいようにフライシートを外した状態にします。
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82)
手前から
1) シェラデザインズ クリップフラッシュライト *3シーズン 二人用 重量約1.9kg
2) ノースフェース ウエストウインド *4シーズン 二人用 重量約2.4kg
この二つのテントは「フープ型テント」といいます。
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83)
 ポールで作った輪(フープ)によってテント幕体を立ち上げ、幕体ごと前後に引っ張って地面にペグを打って固定して張力を与える事で前後に安定させています。
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84)
 ポール同士の交点が無いので、連続長時間の強風に叩かれ続けてもポール同士が擦れる事がありません。単純な構造の割りに風に強い特徴があります。
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85)
 三本のポールを半円状に使う事で強度は高まり居住空間も稼げます。真横から観察するとテント生地の前後方向の張力で立たせている事が判ります。
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86)
 こちらは高さの違う二本のポールで構成されています。三本ポールに比べると居住性に劣りますが、テントの高さを稼ぐためにポールには曲がりジョイントを組み込んでいます。構造が単純で軽く、フックを引っ掛ける吊り下げ式なので、設営撤収はとても早い特徴があります。また、テント全周に渡ってメッシュ生地が廻らしてあるので通気性が良く夏場のキャンプに向いています。
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87)
 フープ型テントは、しっかりとペグが利かない場所には立てる事が出来ません。テントを前後に方向に常に強い張力を掛けられないと立っていられません。もし強風などでペグが抜けてしまうと、直ぐにテントは倒れてしまいます。このようにテント本体だけで立てられないテントを非自立型テントと言い、これに対して、テント本体だけで立てられるものを自立型テントと呼びます。 
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88)
 3) モンベル ムーンライト1型 *3シーズン 1人用 重量約2.0kg
このテントはここでは唯一のAフレームの三角テントです。他との決定的な違いは、ポールの使い方が鉛直方向に力を受けるように設計されている点です。周囲のテントは全てポールをアーチ構造に使って強度を出すドーム型テントです。

 三角テントの特徴は、前後の三角形の頂点を持ち上げるだけで立てられるという事です。それは例えば現場でポールセットを一式紛失してしまっても、木の枝を拾ってきて前後の三角形の頂点を吊り上げてロープを張る事で完全な形でテントを立てる事が出来ます。
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 Aフレームのテントはフープ型テントの仲間です。フープ型テントのように前後にテントを引っ張って立ち上げる代わりに、真ん中の背骨でAフレームを前後に押し広げる事でテントを自立させています。単純な構造ゆえに応用や荒業が利くというのがAフレームテントの最大の特徴です。
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90)
手前から
4) シェラデザインズ ニューハーフムーン *3シーズン 二人用 重量約2.2kg
5) ICIティンバーライン4〜5 *3シーズン 4〜5人用 重量約3.2kg
この二つのテントは、二本ポールのクロスドーム型テントです。最小の材料で最大の居住空間を作る事が出来ます。
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 手前ティンバーラインテントは本格的な山岳テントなので、通気性より保温性を重視しています。テント後ろ面にはメッシュパネルが無く小さな換気口が開いているだけです。代わって後ろのハーフムーンは後面には大きなメッシュパネルを持っていて通気性が良く、夏場の暑さにも快適に過ごすことができます。
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 ティンバーラインは山岳で使う事を考えているため視認性の良い黄色をしています。黄色いテントの内部は夜ロウソク一本の光でもとても明るく感じます。反面太陽光の吸収が良く朝寝坊が出来ません。夏の北海道では日の出が早いので朝の4時過ぎには日の直射を受けると暑くて寝ていられなくなります。夏の平地で使うには向きません。
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93)
 2張り共にクロスドームテントですが、左ティンバーラインはスリーブ式でポールを袋状になったテントの耳の部分に通して押し張るように立ち上げます。スリーブ式は強度的に有利な構造ですが、設営撤収がやや手間取ります。 右のハーフムーンは吊り下げ式で、アーチ状に張ったポールに本体のプラスティック製のフックを引っ掛けて張り上げます。設営撤収が素早い反面、スリーブ式に比べて強度的にやや不利になります。
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94)
手前から
7) ノースフェース VE23 *3シーズン 2人用 重量約3.6kg
6) ヒリシャンカ フリードームB *3シーズン 2〜3人用 重量約4.2kg
二張り共、三本のポールを対称に使ったスリーブ式のドーム型テントです。床面は正六角形をしていて居住性が良く、ポール二本のクロスポールテントに比べて風に対する強度も増しています。
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95)
 二張り共基本構造は同じですが、ポールの交点の位置の違いから形が微妙に違います。それはポール素材の特性から、グラスファイバー製ポールのフリードームはポールの柔軟性を生かした作りで強風時には本体が大きく変形する事で風のエネルギーを逃し破壊を免れます。

  それに対してジュラルミンポールのVE23は硬く張力のある素材の特性を生かすため、しっかりしたテトラ構造(三角形)を4面に作って、強い構造体を維持して風に耐えるように作られています。両者一長一短ありますが、特筆すべきは一見頼りなさそうなグラスファイバーポールですが、どんなに暴風に叩き潰されても、次の瞬間にはボヨン!と、元の形に戻るという点です。
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 グラスファイバー製ポールの特徴として、ポール同士の繋ぎ目(フェルールとかジョイントという)が、設営撤収時に本体のスリーブを通す時に常に引っかかり続け、スムーズに通す事が出来ないという使用上の問題と、グラスファイバーはガラス繊維を樹脂で固めている構造上、樹脂の科学的安定度や無理な応力による内部劣化などを知る術が無いという部分で、いつまで使えるか寿命が判らないという、経年的信頼性に問題があります。
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手前から
8) シェラデザインズ ストレッチドームプロ *4シーズン 2〜3人用 重量約6.2kg 
9) シェラデザインズ ストレッチドーム *3シーズン 2〜3人用 重量約3.5kg
10) マウンテンハードウエァー トランゴアサルト *4シーズン 2人用 重量約3.8kg
これらの3張りはジオデシックドーム構造と称され、悪条件に強いテントの代表格です。たくさんの三角形面で構成された強度の高いテントです。ストレッチドームは三角形を10面、トランゴアサルトは8面もっています。
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 標準のストレッチドームを強化したものがストレッチドームプロです。その違いは細部にわたりますが、主な違いは使われている超々ジュラルミン素材のテントポールの太さが0.433(インチ)と0.355(インチ)と通常使われている0.34(インチ)のポールに比べて太く高強度のポールを採用している点です。また前室の屋根を支えるポールも太いものを二本使い積雪に備えています。
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 ストレッチドームに比べて一回りコンパクトなトランゴアサルト、横幅が狭くなった分、横ポールの曲がり角度がきつくなるので一箇所曲がりジョイントを使っています。滑らかな円径に比べ不自然な曲がり部分があると強度的には不利ですが、十分積雪や強風にも耐える強度を備えています。
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100)
 トランゴアサルトは厳しい山岳テントらしく、後ろパネルには小型の窓しかありません。出入り口もやや狭く低い作りです。このテントに夏の快適性はありません。ストレッチドームには十分なメッシュパネルがあり、ストレッチドームプロにはメッシュパネルは出入り口を兼ねたドアパネルになっています。

 吊り下げ式テントはテント本体が酷く凍ってしまっても撤収が容易という特徴があります。この三つのテントは良く似ています。それはシュラデザインズを起した人が新たに立ち上げた会社で作られたテントという繋がりがあるからです。
 
(その一)テントの設営・・・001〜020

(その二)テントの設営・・・021〜040

(その三)テントの設営・・・041〜060

(その四)テント内部の広さ・・・061〜080

>(その五)構造的な特徴・・・081〜100

(その六)撤収と考察・・・101〜112
  
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