58)蝦夷鹿の話(その三)
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蝦夷鹿の親子 VS 人の子供 
 蝦夷鹿の話(その二)の続編です。 蝦夷鹿の親子を観察していたら食事を終えたお姉ちゃん鹿がやってきました。 お姉ちゃん鹿は末っ子鹿と母鹿の中間に末っ子鹿と同じ方向を向いて座りました。
目前に陣取るエゾシカに怪しく近寄る男の子の不自然な動きに思わず笑ってしまっている女の子の笑顔の写真
3-1)
 午後になりキャンプ場に家族連れが到着しました。車の中から勇んで子供達が飛び出します。さっそく蝦夷鹿を見つけました。すでに遠巻きに観察している私を見つけてこちらにやってきました。

 そこで子供達に「三人でじゃんけんして勝った人が一人でゆっくり鹿に近寄ってみなさい」と指示を出してみました。すでに小鹿は母鹿より「その場でじっとしていなさい」と指示をされています。

 さて、子鹿は母鹿の言う事を何処まで忠実に聞くのでしょうか?実験の始まりです。 じゃんけんに勝ったはいいけど、一人で行く事にちょっとビビリぎみの男の子が恐る恐る近寄っていきます。そのぎこちない動きをみて女の子が笑っています。
末っ子鹿にあと3メートルまで迫っている怪しい動きの男の子の忍び足の写真
3-2)
 腰が引けながらも怪しい動きで近寄っていきます。

 末っ子鹿は母鹿に目線を送り窮地を訴えますが、母鹿はあえて知っていながら無視をしています。お姉ちゃん鹿も母鹿の死角を補う見張りを実行しています。

 このあと男の子は絶妙な間合いをもって接近を止めました。これ以上近寄ってはいけないという空気を読んだのです。子供には本能で感じる能力がまだ残っているのか、小鹿が発する「それ以上来ないで!」という叫びが聞こえるのでしょう
子供達三人で親子鹿三頭に接近していき、三対三の面白い駆け引きをしている写真
3-3)
 しばらく緊張状態が続いて、母鹿が末っ子鹿に目線を与えると小鹿は安心して休みはじめました。そこで安定を破る為に、「よし、それじゃみんなで近寄ってみなさい」とけしかけますが、他の子供達も静かに鹿との間合いを読んで足を止め、安定した状態を保っています。

 しかしそこに他の大人たちがデジタルカメラや携帯電話を持って接近してきました。
近寄る子供に耐え切れずついに立ち上がってしまった末っ子鹿の写真
3-4)
 もっとじっくり観察したかったものの、邪魔が入る前にと、先頭の男の子に大きな手振りで「もっと行け!もっと行け!」と指示を出します。

 そして一歩踏み出した所で末っ子鹿はたまらず立ち上がってしまいました。

 母鹿はさりげなく様子を伺っています。
近付く子供達にいやだな〜という表情をしているエゾシカの写真
3-5)
 次はお姉ちゃん鹿の番です。人間に三方を囲まれて姉ちゃん鹿も母鹿に窮地を訴える目線を送っています。

 ここでも母鹿はあえて目線を送りません。しかし耳はしっかり娘を気使っています。

 母鹿の指示を守れなかった末っ子鹿はばつが悪そうに母鹿の後ろをうろうろしています。
お姉ちゃん鹿も立ち上がってしまい、母鹿の元に向かって歩いていく後ろ姿の写真
3-6)
 さらに「行け!行け!」と手振りすると、一気に二歩間合いを詰めた所でお姉ちゃん鹿も耐えられずに立ち上がってしまいました。
人間達に囲まれてしまい母鹿の座っている周りに子鹿達が集っている写真
3-7)
 さらに人が増えてきました。 不安になった末っ子鹿は母鹿の元に向かいます。
母鹿に接近しようとする子供達をジロッと見ている母鹿の写真
3-8)
 いよいよ本丸の母鹿に接近します。

 母鹿 対 人間の子供の構図です。お姉ちゃん鹿は直ぐ近くで草を食んでいます。

 実はこの母鹿はキャンプ場を根城にする群れのリーダー格の母鹿なのです。頭が良く、人間の顔を識別しているようです、人に対しては温厚ですが敵に対しては猛然と立ち向かう勇気を持っています。
母鹿の横を通り末っ子鹿に接近しようとする子供達を一瞥している母鹿の写真
3-9)
 末っ子鹿は母鹿に寄り添います。
 母鹿は人が末っ子鹿に近付くのを気にしているようでした。蝦夷鹿の敵はヒグマ、という話をしましたが、実はもう一つ敵がいます。 それは「わんこ」です。昨今犬を連れてキャンプを行う人が増えています。キャンプ場内は犬の放し飼い禁止ですが、ルールを無視して場内に放す無責任な者が現れると一騒動勃発します。

 子鹿に吠え掛かる犬に猛然と母鹿が立ち向かいます。鹿の言葉で激しく威嚇して得意の頭突きで突進します。都会育ちのやわなわんこは撃退されてしまいます。
男の子が2メートル以内に近寄った所でついに立ち上がった母鹿の写真
3-10)
 母鹿は「あんた達しつこいわねっ!」って感じで立ち上がり家族全員でゆっくりと森の中に帰っていきました。こうして母鹿は人間は自分達に危害を加えない存在という事を小鹿たちに教えているのでしょう

 それは別として、現代っ子の子供達が野生の蝦夷鹿との間合いを見極めた所が面白い部分でした。

 注)子連れの野生動物にはむやみに接近しないのが基本です。
 
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