60)蝦夷鹿の話(その五) |
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蝦夷鹿が及ぼす危険 |
観光客的視点で見ている分にはかわいい蝦夷鹿ですが、同じ土地で共存していくには、畑の作物を荒らされたり庭の木々や花壇の植物を食われたりして、困った事態が起こります。そしてさらに危険な事態も起きているのです。 |
5-1)
この春に生まれた小鹿が車に撥ねられて死んでいました。小鹿は常に母鹿と行動を共にしていたはずです。死んでしまった小鹿の傍には母鹿が寄り添っていた痕跡がありました。
現場にスリップ痕も無く、周囲に車の部品の脱落などは見られませんでした。小鹿は体重が軽いので車へのダメージは少なかったものと推測されます。 |
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5-2)
こちらは雌鹿の成獣が轢かれています。現場に残されたスリップ痕よりこれはトラックに衝突したものと思われます。バンパーより上の車体へのダメージも乗員へのダメージも少なかったものと推測されます。鹿は肺にダメージを受けた瀕死の状態でしばらく生きていた様子で多量の鮮血を吐いて死んでいます。 |
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5-3)
これは雄の成獣です。恐らく体重は100kgを超えていますが、周囲に事故車両の部品の飛散もみられずブレーキスリップ痕もありません、また、鹿の角は両方共に根元より折れてどこかに飛んでいってしまっています。トラックなどの大型車両に跳ね飛ばされたのではないかと推測します。
このような大型の鹿と一般的な乗用車が衝突すると、バンパーで足を払う形で鹿の体をボンネットの上に跳ね上げ、そのままフロントガラスを突き破って車内に飛び込んでしまう事があります。その時に乗員を直撃すると深刻な事態になります。 |
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5-4)
鹿は元来南の地方の生き物です。あまり雪には適合出来ていません。足元のひずめは舗装道路の上では非常に滑り易く上手に歩けません。特にとっさの時などいきなり転んでジタバタしたり、急に起き上がってあらぬ方向に走り出したりする事があります。
突然路上に踊り出た鹿との衝突を避けようと、突発的な急ハンドルを切ってしまうと、車両が路外転落してしまいます。その時運悪くコンクリート系の丈夫な工作物に激突してしまうと、深刻な事故になってしまいます。 |
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5-5)
実は北海道では蝦夷鹿との衝突事故が絶えません。 それは危険を感じると一目散に駆け出すという蝦夷鹿の性質に起因するものではないかと思います。 車を運転する際は、注意看板と路面に付いた不自然なスリップ跡などに注意し、基本的には減速をもって衝突事故を防ぐしかありません。
不幸にして鹿に遭遇してしまった時には、まずはブレーキです。不用意にハンドルを切ると路外転落を招き重大事故に発展する可能性があります。
特に夜間、早朝、夕方や、霧や雨等の視界の悪い時、新月や曇り等で月の出ない夜、街灯の無い真っ暗闇の道路、単独走行時、等に危険が増す傾向があります。 |
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5-6)
私もかつてバイクで蝦夷鹿に衝突した事がありました。バイクは廃車になりました。このときはまるで昆虫がヘッドライトに向かってぶつかってくるように、何のためらいも無く大きな蝦夷鹿がガードロープを飛び越えて一足跳びに真横からヘッドライト部に激突してきました。
幸いにも対向車も無く、蝦夷鹿に衝突後一緒に路上を滑走しただけで済みました。身体は優秀なライディングウェアーの御蔭で怪我はありませんでした。が、バイクのフレームにクラックが入り廃車になりました。(クラック=亀裂) |
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5-7)
蝦夷鹿に衝突したり事故死した鹿を発見した場合には、速やかに警察に届けましょう。鹿の死体はヒグマが発見する前に片付ける必要があります。ヒグマは雑食性で鹿の死体も好んで食べます。
もし先に死骸をヒグマに発見されてしまうと。それはそのヒグマの獲物という認識になってしまいます。ヒグマは一度手に入れた獲物に対する執着心が非常に強く、人がその死骸に近付くと、獲物を守ろうとするヒグマに襲われてしまいます。 |
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5-8)
車を運転中などに蝦夷鹿の死骸を発見した場合は、むやみに車外に出て死骸に近付くのは危険です。すでに死骸に居着いたヒグマが車の接近に気付き、一時的に付近に身を潜めてこちらの様子を伺っている可能性があるからです。
スムーズに通報する為に、まずはその道路の名称を確認します。そしてキロポスト標識などがあれば、その標識からどちら方面におよそ何キロ地点、というように場所が特定しやすいように情報をまとめて通報します。 |
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5-9)
道標識やキロポスト標識などが確認できない場合などは、付近の橋の名前を確認してその橋から何キロ何町よりの地点、などというように第三者が後に特定しやすいように通報します。
これは携帯電話などで緊急通報する場合全般に言えることですが、まずは電話の先は何処に繋がっているのか判らないので、おおまかな判りやすい場所から順番にゆっくりと伝えます。たとえば、「北海道の富良野の十勝岳温泉に向かう道路の道々OO号線のOO橋から市内方向にOOkm進んだあたり」など、まったく判らない第三者にいきなり細かな事言っても通じないということを念頭に話す必要があります。 |
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5-10)
鹿の母親はヒグマから身を守る方法は知っていますが、交通ルールは知りません。また、将来的な自然保護の見地から食べていいものと食べてはいけないものの区別もつきません。 あたりまえの事ですが、蝦夷鹿は自然のままに生きるのみです。
自然と共存するためには、人間の方がもっと自然について勉強する必要がありそうです。 |
・・・・・蝦夷鹿のおまけ |