68)札幌国際スキーマラソン2008
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 思い起こせば初めてスキーマラソン大会に出場したのが1989年の第9回札幌国際スキーマラソンでした。早いもので今年で20年目になりました。
 この大会は札幌ドームを起点に白旗山競技場を折り返す札幌の裏山的な広いエリアで行われ、北海道農業試験場、羊ヶ丘展望台、札幌オリンピック会場跡地、西岡水源地、焼山、白旗山、札幌台、月寒川上流域、厚別川上流域、といった自然の深い部分を通り、演習場などこの機会にしか通ることが出来ない場所もあり、札幌の自然の濃さを実感できる貴重なチャンスでもあります。
第28回札幌国際スキーマラソン2008
2008年2月10日
競技種目・参加資格
スキーマラソン50Km(FIS国際スキー連盟認定競技会) 
1)健康な身体を有する19歳以上の人
2)スタート時から7時間(420分)以内に、全ての関門を通過し、ゴールする自信のある方。なお、31.5km地点の通過制限時間は4時間30分(270分)以内です。
スキーマラソン25km(FIS国際スキー連盟認定競技会)
1)健康な身体を有する16歳または高校生以上の方
2)スタート時から4時間30分(270分)以内に、全ての関門を通過し、ゴールする自信のある方。
歩くスキー10・5・3km
1)健康な身体を有する方(年齢制限なし)。
2)制限時間なし。
走行方法
フリーテクニック ただしスタート後のセパレートコース(20m)の区間はスケーティングを禁止します。
競技種目・参加人数
A)スキーマラソン 
 50km  男子698名 女子54名 合計757名
 25km 男子569名 女子84名 合計653名
b)歩くスキー
 10km 男子507名 女子130名 合計673名
 5km 男子214名 女子238名 合計452名
 3km  男子88名 女子74名 合計162名
総参加人数 2661名
大会パンフレットより抜粋
 正式競技のスキーマラソンは、「札幌ドーム」をスタートして「白旗山競技場」を折り返す50kmコースとその手前で折り返す25kmコースがあります。他に市内の子供たちが奮って参加する歩くスキー10km、5km、3km、があります。歩くスキーと言っても、よーいドンの競争です。
スキーマラソン50km競技のスタートライン後ろの選手集合場所の写真
1)
 スタート地点は全種目同じです。そこで混雑を避ける為に種目ごとにまとめて8:50から9:30までの時間差を付けてスタートします。

 さらにスキーマラソン競技部門では、参加者のレベル(過去の走行タイムや予想ゴール時間)によって、あらかじめゼッケン番号を割り振りしてしてあり、スム−ズなスタートが出来るように工夫されています。

 それは優勝争いをするような人は前の方に並び、地道に完走を目指す人は後ろの方へ並ぶように、ある意味強制力をもってコントロールしています。 少々厳しいように感じるかもしれませんが、遅く走る人が前列にまぎれ込んでしまうと危険な混雑を招く事になってしまいます。そんな実態をふまえた対策です。

 写真は50Km競技の男子ゼッケン番号1301番以降、女子531番以降の選手が並ぶマイペース完走組みの場所です。
スタート地点通過の写真
2)
 まずは最長距離の50km競技よりスタートします。50km競技に限り、さらにスタートの安全策として第1スタートが8:50・第2スタートは9:00の二段階ウエーブスタート方式を採用しています。

 スタートから100mは事故防止のためスケーティング禁止区間になっていて、コースカッターでトラック(2本溝)が刻まれています。その区間スケーティング走法の選手はストックのみで漕いで進みます。

 壇上から選手にエールを送るスターターは上田文雄札幌市長です。これは第二スタートの最後尾より撮影したスタートライン通過の写真です。
幅の広いコースを3列になって走る選手達の写真
3)
 スタートから3Km地点の写真です。スタート後ゆるい上りを進んでいく事で、各選手の力の差によって集団が前後に伸びて、スタート時のだんご状態が速やかに解消されていきます。

 この地点ではクラシカル走法のコース(2本溝)がついているのでスケーティング走法とクラシカル走法の分離がうまく出来ています。スケーティングをしている選手達も集団がばらけてきて適度な距離を保ち順調に走っています。

 スケーティング走法はスキーを開いて体軸を左右に振るようにして進むので、選手同士が接近しすぎると相手のストックをスキーで踏んでしまい絡んで転倒してしまう危険があります。 時間差スタートもウエーブスタートも一部スケーティング禁止の措置もすべては接触転倒事故を防ぐための工夫です。
急な登りコース上で先にスタートした50km競技の選手に25km競技の選手が追い付いてきている写真
4)
 この大会を遅い参加者の立場で見続けてきましたが、昔から構造的問題があるように見えます。それは50Km競技と25km競技のコースが途中まで同じであるという事に起因する一連の事象です。

 まず50Km競技スタートの20分後に25km競技の選手がスタートする所からそれは始まります。25km競技の先頭集団が50kmの最後尾集団に追いつき、追い抜きにかかります。

 先頭集団のエリート選手達は、優れた身体能力を持ち、右に左に上手に遅い選手を追い抜いていきます。彼らは全力を出すべき勝負処まで力を温存していて、混雑の中では決して無理はしません。

 ところがエリート選手では無く、完走マイペースの選手でも無いカテゴリーの選手達が追いついてくると危ない事が起こります。彼らの一部は遅い選手達を無理やり抜いていくのです。(技術的にもマズく配慮のない抜き方)それによって接触転倒といった事故が発生してしまいます。
森の中の急斜面コースで追い越しをかける25km競技の後続の選手を先に行かせるためにコース脇に避けている50km競技の選手の写真
5)
 この大会は札幌裏手の自然林を走るコースです。自然保護の観点から、ことさらコース幅を広げるような事はしていません。どちらかというとコースは狭いままです。

 基本的なルールとして、狭いコースで早い選手に追いつかれた場合は道を譲るというきまりがあります。また、早い選手は遅い選手に追いついた場合には声を掛けて安全に追い抜くというルールがあります。競技である以上ルールに従って走らねばなりません。

 しかし、声を掛けずに接触寸前の危ない抜き方をしたり、前の選手のストックを踏んでバランスを崩した隙に抜いていったり、コースが狭くてうまく抜けなかったり、あるいは声を掛けられても道を譲らなかったり、走るのに必死で道を譲る余裕が無かったりと、

 レース中は皆が必死で我先にと急ぐ集団心理が働いている事もあり、冷静な判断がつかない、出来ない、分かっていても出来ない等、様々な参加者がいます。

 写真は画面中央の白ゼッケンの50km競技の選手がコース脇に避けて、集団で追い抜くピンクゼッケンの25km競技の選手をやりすごしている様子です。ここは急な登り坂です。 譲っている選手はスキーを開いて登る事が出来ずに通常の何倍もの体力を消耗をしています。

 それでもスキーを踏まれて転倒して道具が壊れるリスクを考えると、ここはじっと我慢をする事が得策です。弱い選手は端に追いやられてかわいそうですが、これが仕方の無い実態です。

 ここはこの大会一番目の難所でもあります。この急登を登り切ると、急なカーブのある危ない下りが出現します。急坂では距離を開けて一人ずつ通過しなければならず、どうしても手前で詰まってしまいます。

 ましてや誰かが急坂途中で転倒してコース上に倒れてしまうと、次の選手が通れません。転倒者が立ち上がってどけるまでコースが塞がります。

 そんな転倒者が転がっている所に、もし次々と後続選手が滑り降りていったら大きな事故になってしまいます。スキーマラソン用の板にはエッジは無く、急に止まったり曲がったり出来ません。

 そんな事があってこの急な登り坂は、大渋滞が発生する場所でした。坂の下から上まで二列になって完全に詰まって止まってしまうのです。びっしり先が詰まっているので、皆大人しく先が動くのを待って順番に、よちよち、進むしかありません。

 しかし、そこに25Kmの選手が追いついてくると、完全に詰まっている大渋滞の中を無理やり踏み越えて進むような事態も発生していました。そうなると罵声や怒号が飛び交い、険悪な空気が漂います。 そんな状態に直面してこの大会から去っていった方も少なくありません。

 それでも、根本的な問題を抱えながらも大会運営側の工夫によって現在では極端に危険な状態や険悪な事態は発生しなくなりました。
晴天が作る木々の影が美しく映えるコースを走る選手の写真
6)
 スタートから12Km地点を過ぎたあたりで25Km競技コースが折り返しになって50Km競技コースと分岐します。

 ここでようやくピンクゼッケンの追撃から開放されます。それまでの常に後ろを気にする我慢の走りから、のびのびと大きなフォームでペースを上げて走り、遅れを取り戻します。 ゆっくりと周りの景色を楽しむ余裕も出てきます。

 しかし残りはまだ37Km以上もあります。しっかりペースを考えないと、遅くてタイムアウトになってしまうか、急ぎ過ぎて早々に体力を使い果たしてリタイヤしてしまうことになります。 50Km最後尾もまばらになり、他の選手に追いつくたびに、しばらく一緒に話をしながら走ったり、お互い励ましあいながら関門突破を目指します。

 スタート時に真横から照らしていた太陽が真上にきています。晴天の冬の一日、葉を落とした木々の影、森中の日時計が時間はまだあるだいじょうぶと励ましてくれます。
白旗山競技場へのコース入り口から全体を望んでいる写真
7)
 中間関門の白旗山競技場です。ここまで31.5Kmを4時間以内に通過する事が最初の目標になります。 しかしここに制限時間内に到達したとしてもあと半分走る力が残っていないとゴールまで辿りつけません。

 もし自信が無い時はここで自らリタイヤ宣告して専用の回送バスに乗ってゴールに戻る事も出来ます。私はかつて3回乗りました(笑) 残り18.5Kmを走り最終ゴールの制限時間はスタートから7時間の午後4時です。
穏やかな春の気配を感じる山部川沿いに伸びるコースの写真
8)
 白旗山を通過するとしばらく走りやすいコースになります。写真は山部川沿いの走りやすいコースです。厳冬期の2月ですが、川面に太陽がきらめき、すでに春の気配を漂わせています。

 普段は人など全く居ない場所なのに、今朝から沢山の選手達が大挙して通っていたため、森の蝦夷リスは驚いてしまいコースを挟んで通行止め状態になっていました。選手が途切れたすきにコース脇の木々をちょろちょろしています。全てを雪に支配された寒々とした森の中にあって、懸命に生きる小さな姿を見ると感じ入るものがあります。
登りコースの真ん中に付けられた真新しいスノーモビルの走行跡の写真
9)
 さらに選手がまばらになってくると大会運営のためにスノーモビルがコース上を走るようになります。通常はコース脇の部分を走行するのが一般的ですが、この急坂ではコース脇に寄らず中央部を走行していました。スノーモビルでコース上を走行すると車体の無限軌道でコース表面を細かく砕いてしまいます。

 それはスキーを滑らせる動作のみのスケーティング走法では大きな影響はありませんが、クラシカル走法では交互に蹴り足スキーを後方に蹴り出すことで雪面を蹴って推進力を得るので、雪面が荒れてていると、蹴り足スキーが雪面を捉える事が出来ずに、空振り状態になってしまいます。

 そうなると極端にバランスを崩してしまい、無駄に体力を消耗してしまいます。疲れが出てくる後半は余計にこたえます。今回はコースが切られていない範囲が長かった事との合わせ技でクラシカル走法にとって厳しい後半戦になりました。
小高い丘を越えるコース上から札幌市内を見下ろしている写真
10)
 下り坂を気持ちよく滑走していると、先行していた選手に追いつきました。この辺りは札幌市街を見下ろす高台になっています。ここまで帰ってくればあとはゴールまでほぼ下り基本のコースです。

 狭いコースを我先にと他人を押し退け踏みつけ先を急ぐのも競技ゆえの正常なスキーマラソンの姿ですが、ゆったり景色を楽しみながら、お互いに励まし合いながら完走を目指すのもスキーマラソンの正常な姿だと思います。

 全ては一杯のビールを美味しく飲む為の汗だったりします。
日が傾いた終わりかけの青空にくっきり映える残り45kmを示す赤い文字の写真
11)
 残りあと5Kmこの坂を上り切って最後の給食所で一休みすると、ゴールが見えてきます。

 かつて札幌ドームが出来る前は、羊ヶ丘の展望台がスタートゴールになっていました。当時はようやく展望台に帰ってきたとおもいきやゴール直前で方向を変え、一旦現札幌ドーム方向にかなり下ったあと折り返し、展望台のゴールまで登り返すという疲れた身体には厳しいコースでした。
札幌ドーム完成後は、コースも良い方向に変わり、特に初心者が50Km完走にチャレンジしやすい良い大会に成長していると思います。
遠く銀色に光る札幌ドームに向けて美しい夕日に押されるように緩やかな斜面を滑走している写真
12)
 札幌ドームに帰ってきました。白樺の長い影を追いかけるようにゴールに向かって緩やかに滑走していきます。

 かつては、制限時間が刻々と迫るこの時間帯になっても走っている選手も少なくありませんでした。給食所で励まされ、コース係りの方々に励まされ、選手同士は一つの連帯感をもって皆で励まし合いながらゴールを目指したものです。

 しかしながら、以前のスタートの混雑が酷い状態の頃に参加して痛い目に遭い、この大会から離れていった方々も少なくないようで、かつてクロスカントリースキー販売の現場でお客さんから度々聞かされていた事柄でした。でも現在は様々な対策がされて格段に良い大会になっています。
オリンピック開催都市の市民スキー大会として
これからも盛り上がっていくように応援しています。 
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